トルコリラが反発して安定するなど、事態の当面の打開・安定化につながると考えられることは何だろうか。トルコに加えて、やはりトランプ大統領と対立して通貨が急落しているイランと中国を含めて、状況を整理してみた。

(A) トルコ

<米国と対立する上での強み・対抗するためのカード>

  • 黒海から地中海への出口を握る戦略的要衝。NATOの重要な一員であるトルコのロシア接近は、西側の防衛戦略への打撃になる。
  • トルコと歴史的にも関係が深いドイツは、トルコ情勢の悪化を望んでいない。メルケル独首相は8月15日のエルドアン大統領との電話会談で、「トルコ経済が強くなることはドイツにとっても重要だ」と述べ、リラ急落など経済混乱の収束に向けて協力する考えを示した。フランスなどEUの他の国もトルコを支援する可能性あり。

<米国と対立する上での弱み>

  • ロシアも中国もドイツも、対米関係の決定的な悪化は望んでいない上に、金融面でトルコを支援する力にも限度がある。どこまで本気でトルコ支援に乗り出すか不透明。150億ドルの直接投資でトルコを支援することを表明したカタールについても、同じことが言える。
  • トランプ米大統領はロシアとの関係改善を志向しており、欧州の同盟国には冷淡な面がある。トルコのロシア接近に特段の危機感を抱かない可能性もある。

トルコリラ下落歯止めと米国人牧師の解放がかぎ

<事態の収拾につながると考えられる出来事>

  1. トルコ共和国中央銀行(CBRT)による大幅な利上げでトルコリラ下落に明確に歯止めをかけるとともに、政治(大統領)からの独立性への信認を市場から得ること。9月3日に発表された8月の消費者物価指数は前年同月比+17.9%の急上昇になり、CBRTは物価安定への重大なリスクに対応する考えを表明した。9月13日の金融政策決定会合で利上げが決まるとみられるが、上げ幅はエルドアン大統領に気兼ねして小幅にとどまるのではないか。
  2. トルコ国内に拘束している米国人牧師の早期解放により、トランプ大統領の姿勢柔軟化を引き出すこと。

トップ会談で信頼醸成を

(B) イラン

<米国と対立する上での強み・対抗するためのカード>

  • 機雷を敷設するなどしてホルムズ海峡を封鎖すれば、原油積載タンカーが航行できなくなり、中東からの原油供給が細って価格が急上昇することを通じて、経済的な打撃を与え得る。
  • イラン核合意から離脱したのは米国のみ。独仏などは合意を維持する立場。

<米国と対立する上での弱み>

  • 米国が段階的に対イラン経済制裁を再開していく中で、欧州企業によるイランでのビジネスも間接的に影響を受ける(米国でのビジネスに支障が出る)。このため、イランからの縮小・撤退を選択する企業が今後増えるとみられる。欧州委員会は打撃を軽減する策を5月18日に公表。イラン進出企業への投資支援も打ち出したが、実効性不透明。
  • ホルムズ海峡封鎖を実行した場合、強大な米国の軍事力と正面から対決する形になる恐れがある。

<事態の収拾につながると考えられる出来事>

  1. イラン核合意に追加条項を付加するなど、イランの核開発を今後長期にわたり確実に封じ込めることのできる取り決めを結ぶこと。
  2. 米国と北朝鮮の関係が改善した事例のように、トップ会談で信頼感を醸成すること(ただし、イランの最高指導者ハメネイ師は8月13日、米国とは戦争も交渉もしないと述べて、このシナリオを拒否した)。