安息日に働くタクシードライバー「無宗教だから」

写真3
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シナゴーグ(ユダヤ教の教会)に出向く途中だと思われるファミリー。

 自転車で走る若者の集団が目立った程度である。歩いているのは、おそらくこれからシナゴーグ(ユダヤ教の教会)に一家揃って出向く途中だと思われる、着飾ったファミリーばかり<写真3>。筆者は文字通り、完全な異邦人と化していた。

 さてどうするか。空港に行くには、最終手段であるタクシーを使うしかない。1台いたので、料金の交渉をして、テルアビブの空港まで乗ることにした。米ドルで100ドルも払うことになったが、やむを得ない出費である。道中に話を聞いてみると、この男性の運転手はイスラエルで生まれ育った40歳代。奥さんと子供2人を含め、一家そろって無宗教だという。ユダヤ教信者が多い中で大丈夫かときいてみると、仲間もいるし社会的差別はないという。なるほど、だから安息日もタクシーを動かしてお金もうけができるわけだ。

宗教心の薄い日本人に理解できる?

写真4
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夕食をとった空港内のすしバー。イスラエルは今、すしブーム。

 テルアビブの空港に無事着いて、大きい荷物をコインロッカーに預けて身軽になった。空港内の地下には鉄道の幹線の駅がある。飛行機の時間はまだかなり先だし、さて近隣の街にでも行ってみるか、ということに普通はなるわけだが、この国の安息日はどこまでも徹底している。国の鉄道であるにもかかわらず、運行はすべて停止しており、しかも運転の再開は夕方ではなく、夜の10時台になってからというおまけつきだった。これでは動きが取れない。空港からテルアビブの中心街にタクシーで出て時間をつぶす選択肢もあったが、安息日のあまりの徹底ぶりにこの時点で疲弊してしまった筆者は、空港の周辺にとどまったまま、フライトまで時間をつぶした。夕食は空港内のすしバーでとった<写真4>。イスラエルはいま空前のすしブームだという。

 ユダヤ教の厳格な教義や歴史的重要性が根底にあるにせよ、ここまで徹底的に安息日を守る必要があるのだろうかと、総じて宗教にルーズな面がある日本人は考えがちだろう。さらに、休みの日をレジャーや買い物に人々が使わないと経済成長にネガティブではないかという疑問も、日本人である筆者の心の中に浮かんできてしまう。

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