平和を維持するには、違いを認めた上での妥協と協調しかない
アルメニア人地区の教会など、旧市街でまだ見ていない観光スポットを回っていたときのことである。声をかけてきたエルサレム在住が長いというユダヤ人の老人がいた。その時間でもまだ中を見ることができるユダヤ教の教会(シナゴーグ)があるから案内してやるという。筆者の長く豊富な海外旅行経験に即して言うと、観光地で向こうから声をかけてくる人の半分以上は、要するにお金目当てである。 今回も警戒しながら会話していると、話の流れがまずい方向に向かった。どこを観光したかと聞かれたので、正直に、旧市街の主な観光スポットに加えて、この日の午前に訪れたベツレヘムの教会を挙げると、彼の様子が激変し、「ベツレヘムは退屈(boring)、退屈、退屈」と繰り返し言って相づちを求めてくる。適当に返答した上でガイドは不要だと告げると、怒った様子で「グッバイ」と言い、去っていった。
パレスチナ自治区は一応イスラエルの国内にあるし、ベツレヘムの教会は重要な観光スポットである。それを全否定するほど、彼はパレスチナが大嫌いなのだろう。イスラエルの右派政党で入植政策を推進しているネタニヤフ首相の与党リクードや、もっと右寄りの政党の支持者だったのだろうか。
歴史的に複雑に入り組んでいる土地で平和を維持するには、違いを認めた上での妥協と協調しかないと筆者は思うのだが、心の壁を取り壊すのは容易なことではないようである。米国などの歴代政権が中東和平の推進に注力してもなかなか進まない原因の根底にあるものを、少しは実感することができた旅になった。
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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。
3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。
4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。
各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。
■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江
■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)
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