9月の「総括的な検証」で、部分的修正はありうる

 「なお、本日公表した『経済・物価情勢の展望』(展望レポート)で示した通り、海外経済・国際金融市場を巡る不透明感などを背景に、物価見通しに関する不確実性が高まっている。こうした状況を踏まえ、2%の『物価安定の目標』をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、『量的・質的金融緩和』・『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行うこととし、議長はその準備を執行部に指示した」

 筆者の見方を端的に言えば、検証の準備作業を行う日銀執行部は黒田総裁の部下であり、検証を行う政策委員会メンバーについては民間エコノミスト出身の2人を除く7人を「黒田派」とみなすことができる。したがって、異次元緩和の効果については当然、実質金利の低下を通じて景気や物価にポジティブな効果を及ぼしてきたという、肯定的な結論が下されるだろう。

 ただし、この検証を機会に金融緩和の枠組みの部分的な修正や、どのような追加緩和の選択肢が残されているのかが議論される可能性、その場で追加緩和が決まる可能性なども、もちろんある。

「2年」とは日銀の「気合い」の表現

 どのような内容になりそうか、マスコミの間で報道合戦が今後行われるとみられるが、日本経済新聞がまず7月30日の朝刊で、日銀は9月の検証で以下のような方針をとると報じた。

■「『2年程度で2%上昇を実現する』という物価目標の達成時期を取り下げる方針だ。できるだけ早く2%上昇を達成するという姿勢は変えないが、時期を曖昧にすることで政策判断が過度に縛られないようにする」

■「日銀内では2年目標を堅持しているために決定会合のたびに市場で緩和期待が過熱し、相場が不安定になるとの指摘がある。原油急落などの特別な事情で物価上昇が鈍った場合に、柔軟な対応が取れないとの声も出ている」

■「2年に代わる新たな数字は置かない方針だ。デフレ脱却への取り組みが弱まったと受け止められないように、できるだけ早期に物価2%を実現するとの姿勢を繰り返し強調していく方向だ」


日本経済新聞 2016年7月30日付記事 「日銀が追加緩和『経済対策と相乗効果』」から

 異次元緩和を日銀が2013年4月に開始してから、すでに3年以上が経過している。「2年」で物価を2%にするという公約を日銀は達成できなかった。このため、「2年」という言い回しは日銀としての「気合い」をシンボリックに示すことのほか、その意義をすでに失っているということができる。

 なお、上記の日本経済新聞の観測記事は、黒田東彦総裁が7月29日の記者会見で述べた以下の囲みの部分の発言がヒントになったのではないかと筆者はみている。総裁は「できるだけ早期に実現する」という方針は変わらないとしたが、「念頭に置いている2年程度という期間」を撤回しないとは言わなかった。

黒田総裁の7月29日の会見での発言

■「ご案内の通り、日本銀行は2013年4月の量的・質的金融緩和導入以来、一貫して2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということに今コミットをしております。量的・質的金融緩和の導入に当たっては、できるだけ早期にという際に念頭に置いている期間として2年程度という期間を示したわけであります」

■「量的・質的金融緩和の導入後、既に3年以上が経過していることは事実でありますけれども、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するという方針に変化はありませんし、今後もこれを変更する考えはありません」