
日銀は7月28、29日に開催した金融政策決定会合で、追加緩和を決定した。
今回追加緩和を行った理由について、日銀は対外公表文で、「英国のEU(欧州連合)離脱問題や新興国経済の減速を背景に、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場では不安定な動きが続いている。こうした不確実性が企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止するとともに、わが国企業および金融機関の外貨資金調達環境の安定に万全を期し、前向きな経済活動をサポートする観点から」だとアナウンスした。
追加緩和策の内容は、以下のものである。
(1)ETF(上場投資信託)買入れ額の増額(保有残高の増加ペースを現行の年間約3.3兆円から約6兆円にほぼ倍増)
(2)企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置
①成長支援資金供給・米ドル特則の拡大(総枠を現行の120億ドルから240億ドルに倍増)
②米ドル資金供給オペの担保となる国債の貸付け制度の新設
「2%達成」のさらなる先送りに布石
決定内容に関する対外公表文と同時に、最新の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の基本的見解が公表された。4月の前回レポートで「2017年度中」に先送りされた「物価安定の目標」2%達成時期は、今回は変更されなかったが、その不確実性が強調された。日銀がこの見通しに自信を持てなくなってきたということであり、さらなる先送りに布石を打ったと言える。
対外公表文はさらに、政府の経済対策策定方針に言及した上で、今回の追加緩和を含めた日銀の対応によって「きわめて緩和的な金融環境を整えていくことは、こうした政府の取り組みと相乗的な効果を発揮するものと考えている」とした。政府との協調姿勢をアピールした形である。
ただし、日銀による恒久的な財政ファイナンスである「ヘリコプターマネー」に事実上動いているという見方が市場の内外で強まるのを避けたかったためか、今回の追加緩和メニューには長期国債買い入れ額の上積みは含まれなかった。
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