小売り業界の業態を超えた競争が過熱。ファミリーマートはドンキホーテと実験店舗をスタート(写真=ロイター/アフロ)

 消費者物価指数がなかなか上がってこない原因の1つに、人口減・少子高齢化から長期的に需要減少が避けられない中での、業態の垣根を越えたり従来の常識を覆したりする、「戦国時代」にも例えられるような小売業における激しい価格競争があると、筆者はみている。

 業態の垣根を越えるような動きは、以前からいくつか見られていた。

 百貨店の地下にあることが多い食品売り場の充実(いわゆる「デパ地下」)。食品スーパー顔負けの売り場になっているケースもある。

 夜間も営業している利便性の高さがウリである代わり、定価での販売が当たり前だったコンビニエンスストアでは、同じ資本系列のスーパーマーケットのプライベートブランド(PB)品を中心に、値段が安い食品の品揃えが強化されるようになった。

 百貨店やスーパーと同じ建物内に、100円ショップや家電量販店が出店しているケースも増えている。

足元で見られる「垣根越え」

 だが、足元で見られているのは、もう少しテンションの高い「垣根越え」であるように思われる。6月に報道ベースに乗った事例を、2つご紹介したい。

 (1)ある大手の家電量販店が、脱・家電量販店の道をまっしぐらに進んでいる。酒類や化粧品などの取り扱いを増やし、駅前から街中への出店も始めた。店の顔とも言える一等地の売り場からスマートフォンが消えた店や、1階に自転車が並ぶ店、家電製品をメインに扱わない店もある。成長市場のネット通販でも顧客との接点を広げており、実店舗の今後の位置付けについて「ショールーミングでも構わない」と、この会社の社長は言い切ったという(6月15日付日経MJ)。

 この「ショールーミング」というのは、なにかを買おうとする際に、実店舗に足を運んで実物を目で見て確かめるものの、そのお店では買わず、オンラインショップで購入する消費行動のことである。米国の多くの人にとっては当たり前になってきたようであり、日本でも実例をしばしば耳にする。

 たとえば、ベビー関連の比較的かさばる商品を買う際に、専門店に行って実物を確かめるものの、スマートフォンでオンライン販売業者のページを開き、値段が同じであればそちらで購入するパターン。配送料が無料なら、届くまで1~2日がまんすることにはなるものの、持ち帰る手間も省けるという算段である。

 家電量販店の品揃えは、筆者の自宅の近くにある店舗を含め、このところかなり幅広になっている。子供の玩具は以前からかなりのスペースがあったが、シャンプーなどの日用品も充実している。都心の店舗では海外のブランド品、酒類も揃っている。ネット通販では、書籍・雑誌にもここ数年、力を入れているようである。

 (2)ある大手のコンビニエンスストアチェーンが、都内で大型店舗の出店が最近目立つ、人気のディスカウントストアと提携。この会社の商品陳列や売り場づくりのノウハウ(屋外陳列など)を取り入れて改装した実験店舗をオープンさせた。雑誌売り場やイートインコーナーは撤去。定価販売が原則のコンビニだが、提携店で目立つのは安さ。屋外陳列の2リットルのペットボトル入りの水は税別68円で、店内の同容量の別商品(99円)より3割も安い(6月4日付日経MJ)。

 このディスカウントストアの「価格破壊力」には、驚くべきものがある。先日、自宅からさほど離れていないロードサイドに中規模店が出店した。何度か足を運んでみたが、食品売り場では生肉も販売するなど、品揃えはそれなりに充実しており、値段は安い。近隣のスーパーマーケットや自転車店などは、価格の面で苦しい戦いを強いられる。