相応の根拠が見出されれば「弾劾」もある

 これに対しトランプ大統領はツイッターで「これは政治史上最大の魔女狩りだ」としつつ、ロイターに対し7月12日、この面談のことは2~3日前まで知らなかったと述べた。だが、家族とのつながりを人一倍大切にしているとされる大統領が、こうした重大なことを本当に何も知らないままだったとは考えにくい。

 ロシア政府による米大統領選への干渉をトランプ氏が容認(黙認)し、これと共謀して選挙に勝とうとしていたことが立証される、あるいはそうした疑惑に相応の根拠が見出される場合は、議会が大統領弾劾手続きに着手する可能性が格段に高まる。

 こうした「ロシアゲート」疑惑の拡大をうけて、民主党全国委員会は「トランプ陣営がロシアと共謀したがっていたことに疑問の余地はない」との声明を発表。昨年の大統領選で副大統領候補だったケーン上院議員は「反逆罪の可能性もある」とした(7月12日 時事通信)。

一方、大統領を見捨てる行動をとれば、再選が難しくなる

 もっとも、来年秋に中間選挙を控えている共和党の下院議員たちが所属政党の大統領をそう簡単に見捨てて弾劾手続きに乗り出すわけにはいかないだろう。以前にも書いたことだが、「ラストベルト」などでトランプ人気が根強い状況が変わらなければ、大統領を見捨てる方向の行動をとった議員は再選が難しくなるという事情がある(当コラム6月13日配信「どうして米国株は最高値を更新しているのか? 『トランプ辞任なら株高』という説もあるが…」ご参照)。

 また、ワシントンポストによると、1996年の大統領選(ビル・クリントン大統領が再選した)で中国政府が選挙結果を左右しようとした疑いが浮上し、FBIや議会が調査したものの、結局のところクリントン陣営や民主党議員の誰も訴追されることはなかったという。

モラー特別検察官がどのような結論を出すか

 米国の刑法では共謀自体は犯罪にならないので、連邦選挙運動法など何らかの法律に抵触していたかどうかを検察当局は調べることになる(7月11日 ロイター)。大統領による司法妨害の疑惑を含め、多方面にわたって調査を行っているとみられるモラー特別検察官が最終的にどのような結論を出すかが、最も大きなポイントになる。

 いずれにせよ、トランプ大統領の政治的な求心力はじわじわ低下しており、財源難から実現困難とみられている大型減税を含む税制改革は、ますます遠のいている。民主党のシャーマン下院議員は7月12日、司法妨害を理由にトランプ大統領の弾劾決議案を提出した。この議案が可決される可能性は現時点ではほとんどないものの、今後は「弾劾」という言葉がこれまでよりも頻繁に、マーケット関連のニュースに登場しそうである。

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