ワシントンの軍事筋によると、トランプ政権は北朝鮮の核・ミサイル関連施設への先制攻撃や、北朝鮮船舶が出入港するのを阻止する海上封鎖などをかつて検討したが、北朝鮮の反撃によって韓国や日本に多大な被害が出ることから「現実的ではない」と判断されたという(7月6日 朝日新聞)。マティス米国防長官は6日、「(北朝鮮によるICBM発射自体で)われわれが戦争に近づいたわけではない」と述べ、外交的解決の模索を確認した。

金委員長「核戦力強化の道から一歩も引かない」

 金正恩朝鮮労働党委員長はICBM発射に成功した後、「米国の(北朝鮮への)敵視政策と核の威嚇が根本的に清算されない限り、われわれはいかなる場合にも、核と弾道ミサイルを交渉のテーブルに上げない」「核戦力強化の道から一歩も引かない」と述べた。このため、次は6度目の核実験強行で米国を揺さぶるのではないかという見方が出ている。もしそうなれば、実質的「レッドライン」の2つめが越えられたことになり、緊張が高まるわけだが、すでに述べた理由から米国による武力行使は予想し難い。

 この間、中朝貿易関係者の間では2年後には制裁が緩和されるとの期待感が広がっており、北朝鮮当局は2年程度で対米交渉により局面を打開する戦略を描いている可能性があるという(7月12日 毎日新聞)。

 7月11日のウォールストリートジャーナル(アジア版)はコラムで、安全保障問題で経験豊富なロバート・ゲーツ元国防長官の対北朝鮮政策案を取り上げた。北朝鮮に体制維持保証を与えることも含め、まず中国との間で包括的で高度な合意に至った上で、実効性ある査察も交えて北朝鮮の核を封じ込める。中国が北朝鮮説得に失敗した場合、米国はミサイル防衛網拡充などで中国との対決姿勢を強めるというものである。

中途半端な緊張状態が、しばらく続きそうな雲行き

 ほかに、経済・金融制裁強化、中国による北朝鮮への原油供給停止などのアイディアは出ている。だが、いずれも切り札にはなりにくい(後者はロシアが抜け道になり続けると実効性は低下する)。中途半端な緊張状態が、しばらく続きそうな雲行きである

 北朝鮮リスクの封じ込めがうまくいかず、中国からはこの問題で一方的に責任を押し付けられることへの不満の声が出始めている中、国内政治的にもトランプ大統領の立場はますます苦しくなっており、「トランプ包囲網」がじわじわ狭まっているようにも見える。

 1月20日の就任式からもうすぐ半年になるが、態勢立て直しはいっこうに進まず、支持率が上向く兆しもない。議会民主党との対立は激しく、CNNなど国内大手マスコミとの関係は悪化したままである。

トランプ長男のロシア問題は深刻度が高い

 これは大統領にとってかなり大きなダメージだと筆者がすぐ考えたのが、7月9日にニューヨークタイムズ(電子版)が報じた、大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏とロシア人弁護士ナタリア・ベセルニツカヤ氏の面談である。時期は大統領選挙期間中の昨年6月9日で、当時選対本部議長だったポール・マナフォート氏と、トランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏が同席した。その後公表された電子メールからは、仲介者が「ロシアの検事総長が、クリントン氏を有罪にする公文書や情報、同氏のロシアへの対応に関する情報をトランプ陣営に提供すると申し出た。非常に高度な機密情報なのは明らかで、ロシア政府によるトランプ氏支援の一環だ」と伝えると、トランプ・ジュニア氏が「感謝する。あなたの言う通りなら、今夏の後半だと素晴らしい」と返信したことがわかり、グラム上院議員(共和党)は「これまでの疑惑の中で最大の問題だ」とした(7月13日 日本経済新聞)。

次ページ 相応の根拠が見出されれば「弾劾」もある