北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、ICBMの発射実験成功の後、「米国の敵視政策や核の威嚇が根本的に清算されない限り、われわれはいかなる場合にも、核と弾道ミサイルを交渉のテーブルに上げない」と述べて交渉を拒否。強気の姿勢を崩さない。(写真:AP/アフロ)

強気の理由は「武力行使はない」と見ているから

 筆者は6月6日に配信された当コラム「何が起きれば『恐怖指数』は急上昇するのか? 北朝鮮の『レッドライン』と『ロシアゲート』疑惑」の中で、北朝鮮に対し武力行使に踏み切る「レッドライン」を米トランプ政権はあえて明示していないものの、米政府高官の発言などから、①核実験、②大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射、③米軍基地への先制攻撃の3つが実質的な「レッドライン」とみられるとした。

 その後、米国の独立記念日(7月4日)に北朝鮮は弾道ミサイルを発射。米軍筋などは当初は中距離弾道ミサイルだと推定していたが、北朝鮮当局がICBM「火星14」発射に成功したと発表すると、米国も飛距離5500km以上のICBMだと認めた(韓国の国家情報院は中距離ミサイル改良型だとしている)。ハワイやアラスカにも届くとみられており、米ジョンズ・ホプキンズ大高等国際問題研究大学院の米韓研究所によると、試験と開発が進めば1~2年で核弾頭1発を搭載し米西海岸を射程に収めるミサイルになり得るという。

 こうした状況になってもトランプ政権の動きは鈍く、武力行使に踏み切る兆候はない。そして、米国の足元を見て(武力行使はないと見透かして)、北朝鮮は強気に出ている可能性が高い。

北朝鮮が反撃すれば、日韓に多大な被害

 武力行使の手法で最も有力なのは、巡航ミサイルによる核施設・ミサイル発射基地空爆だろう。だが、それをためらわせる要因として、①ターゲットを事前に全て捕捉して同時攻撃することの難しさ(核施設は地下にも存在するし、ミサイルは移動発射台の場合もある)、②北朝鮮の強力な砲兵部隊が報復措置として韓国を砲撃した場合に想定される甚大な被害、③左記ともリンクしている韓国・文在寅政権の対北朝鮮武力行使への強い反対姿勢、④国連決議がなく中国・ロシアの事前の了承もないまま攻撃する場合のこれら両国と米国の関係悪化、以上4点を指摘することができる。