実際には、北朝鮮は非協力的だという疑念が米政府内で増しているようである。NBCテレビは6月29日、本気で非核化する気が北朝鮮にあるのかという疑義が米情報機関内で浮上していると報道。北朝鮮はここ数カ月間、複数の核関連施設で核兵器用の濃縮ウランも増産しており、最新の報告を受けた米政府当局者は「北朝鮮が米国をだまそうとしている明白な証拠がある」と指摘したという。

 その後、ワシントンポスト紙が米政府当局者の話として、保有している核兵器の数や核兵器の製造施設について北朝鮮はすべてを報告せず、一部を隠そうとしている可能性があると報じた。ミサイル製造工場を拡張中との報道もある。ボルトン補佐官自身も上記インタビューで、米国側には北朝鮮が約束を守ると「夢見ている人はいない」と述べ、警戒感を示していた。

 7月6~7日に訪朝して協議したポンペオ米国務長官は、非核化の進め方などで一定の進展があったとの認識を表明した。だが、北朝鮮側の反応は全く違った。同国の報道官は「米国側の態度と立場は遺憾なこと極まりない」「米国側はCVIDなど強盗のような要求ばかりを持ち出した」と批判。中国という「後ろ盾」を得て自信を深めた北朝鮮は、トランプ大統領が米朝対話という政治的な成果をいまさら捨て去ることができないだろうという、足元を見透かしたと推測できる交渉態度を見せた。

 結局、米朝首脳会談の結果をどう総括すればよいのだろうか。筆者の考えと重なるのが、英エコノミスト誌元編集長ビル・エモット氏の見解である。「トランプ氏の愛情表現は、失恋で終わる」と題した記事(6月28日付朝日新聞GLOBE+)に、以下の記述がある。

「失恋」に終わったトランプ氏の「愛情攻勢」

 「金正恩氏にとっては大成功でした。中国による経済制裁の緩和に直結する成果と、核保有国として米大統領と向き合う栄誉も得ました」

 「共同声明には過去の米朝対話以上のものは何もありません」

 「私が一番驚いたのは、トランプ氏が脅しをかけて相手を揺さぶろうとする、かの悪名高い手法をとらず、『愛情攻勢』をかけたことです」

 「いずれ核兵器やミサイルを廃棄することで報いてくれるだろうと期待してのことですが、金氏がそんなことをすることはまずあり得ないので、トランプ氏は裏切られて失恋することになるでしょう」

 今後の日本の外交・安全保障のありようは、北朝鮮という核保有国の存在、在韓米軍が将来撤退する可能性、中国の技術進歩・軍備増強と「米中衝突リスク」の増大といった変数を頭に入れながら、じっくり考えていかなければならない。