そして、もっと衝撃的な内容が翌4日の朝に配信された。安倍首相の経済政策アドバイザーの1人でもある本田悦朗駐スイス大使への電話取材をもとにした記事である。本田大使は次期日銀総裁について、「レジームチェンジをきちんと再構築できる清新さと、人心を一新できる人間的魅力や誠実さが必要だ」と述べた。1月25日の時点では本田氏は黒田総裁について、「本当にお元気そうで英語も自由自在。非常に立派な方。年齢的に問題はない」「よくやっていると思う」「(再任も)一つのやり方」と述べていたので、「人心一新」という言葉も交えた今回の発言は、事実上の軌道修正だと受け止めるべきだろう。

日銀人事の流れは変わったのか

 マスコミ各社の世論調査で安倍晋三内閣の支持率が大きく低下して30%台になり、不支持率を下回る中、8月3日頃とみられる内閣改造で、首相は体制立て直しを図る運びである。支持率回復の起爆剤になりそうな政治家が閣僚に起用されるのではないかとみられており、何人かの名前が取り沙汰されている。そうした中での本田発言である。ここにきて日銀人事の流れが変わったのかどうか、じっくり見極める必要が出てきた。

 仮に黒田総裁が再任されない場合には、次期日銀総裁の最有力候補は、インフレ目標の導入を早くから主張しており財務省で副財務官の経験もある伊藤隆敏コロンビア大学教授だろうと、筆者はみている。同氏は黒田日銀の金融政策運営を支持する立場をとっている(「アベノミクス」の一環である大規模な金融緩和を支持していない人物が日銀総裁に指名されることは、安倍首相の続投を前提にすれば、政治的にあり得ない話である)。

 なお、伊藤氏には、日銀副総裁候補になりながら「ねじれ国会」の中で国会同意を得られなかった経験がある。だが、これは日銀総裁ではなく副総裁の候補としてであり、しかも過去の国会会期における話なので、日銀総裁候補に今後指名されて両院の同意を求める場合でも、「一事不再議(一度議決した案件は同一会期中は再び審議しない原則)」には抵触しない。

イエレンFRB議長が一時入院し、健康不安が再燃

 次に、イエレンFRB(連邦準備理事会)議長再任問題について直近の状況を整理したい。「これは再任説にとって強い逆風だ」と筆者が考えたのは、仕事と休暇で訪英中だったイエレン議長が尿路感染症の治療のため6月30日にロンドンの病院に入院し、3日後の7月3日に退院したというニュースである。