外国企業からモノやサービスを買うのはきわめて容易

 「デジタル社会」では、ニュース・百科事典・音楽・映像を含む多種多様で生活を豊かにする情報を、消費者は無料で容易に入手することができる。SNSの活用などを通じて、社会におけるさまざまな活動が従来よりも効率よく、国境を越えて、スピーディーに展開されている。オンラインの手軽な決済サービスと迅速な配送サービスが利用可能になっており、外国の企業からモノやサービスを入手するのは現在ではきわめて容易である。そうした取引の実態を悉皆的(しっかいてき:全例的、漏れなく)に調査し国家間で共有・整理して個別国の経済統計に正確に反映させるのは、なかなか難しいだろう。また、ビットコインに代表されるさまざまな仮想通貨が規模を拡大しており、国の通貨主権を脅かす存在になりつつあるとみる論者もいる。

統計としての限界を露呈しつつあるのでは

 このように、10年ほど前でも想像できなかった新しいライフスタイルが現実になっている。ところが、たとえば家事労働のような無償のものは含まないという大原則をGDP統計は早くから確立してしまっている。さまざまなサービスが対価なしに提供されるデジタル化の大きな波に直面して、GDPに代表される伝統的なマクロ経済統計は技術的な難点に直面するのみならず、統計としての限界を露呈しつつあるというのが率直な評価ではないかと、筆者は考えている。

 デジタル化の波は、物価の上昇を抑制するという点でも、実に大きな影響力を発揮しつつあると筆者はみている。グローバル化とデジタル化(ITの発達)の組み合わせが賃金上昇の抑制を通じてサービス分野の価格上昇を押さえ込んでいるというのは、筆者が以前から主張していることなのだが、ここではもう1つの論点として、価格情報の入手がデジタル化によって実に容易になったことによる影響を取り上げたい。

ネットの普及により価格は安い方へと収れんしていく

 たとえば、ある特定の機種のテレビは、どの店で買うと一番安いか。インターネットが普及する前は、口コミ情報や情報誌に頼るしかなく、リアルタイムの価格情報は入手がほぼ不可能だった。ところが現在では、価格情報専門サイトにアクセスすると、価格が安い順に店舗ごとの販売価格を容易に見ることができる。しかも、宅急便が発達しているので、買った品を車や電車に乗ってわざわざ取りに行く必要もない。一定の価格以上だと送料が無料になることも少なくない。こうなると、高い販売価格が放置されるということがなくなり、全国ベースで販売価格は安い方に収れんしていく。家電量販店の出店が少なく価格面での販売競争がほとんど起こってこなかったローカルエリアに住んでいる人が、都市部よりも高い販売価格を我慢したままテレビを買うといったことが、もはやなくなるわけである。