国内では布野幸利日銀審議委員が6月22日の記者会見で、「インターネットのテーマであるとか、それから、業界の業際的な競合――例えばドラッグストアとスーパーマーケットの競合――が進展していることであるとか、様々な構造的な問題と言いますか、そのような根の深い流れというものが、やはり物価に少なからず影響していることは否めないと思っています」と述べた。

■(Q3)物価が足元で弱含む中での、日銀の金融政策運営をどうみるか。

(A3)いかに追加緩和に追い込まれないようにするか、できるだけ長く「粘り強い」現状維持で持ちこたえるかが、いまの日銀にはきわめて重要になっている。「長期戦・持久戦」をこのまま続けるというのが、今後も政策運営の基本線になる可能性が高い。日銀は守勢に回っており、いわゆる金利調整(長期金利ターゲット引き上げやマイナス金利解除)のチャンスは巡ってこないとみるのが自然だろう。

 将来の利下げ余地を作っておくという、いわゆる「のりしろ論」的な金利引き上げ論も市場の内外で散見されるが、失敗すれば大幅な円高・株安を招き入れる「自爆」に等しい結果になってしまうわけであり、リスク・リターンの観点から明らかに、日銀がとらない方がよい選択肢である。

 日銀は今後も、「物価上昇のモメンタムはしっかり維持されている」という主張を前面に出しながら、追加緩和に追い込まれるのをなんとか避けようとするだろう。

 しばらくはそれで持ちこたえられるだろうと、筆者もみている。また、すでに発表された6月の東京都区部消費者物価から考えて、6月の全国消費者物価(除く生鮮食品)は前年同月比プラス幅を拡大する可能性が高い。これは日銀に有利な動きである。

「禁断の果実」に手を出すか

 だが、米国の利上げ局面の停止あるいは終了がコンセンサスになるとみられる19年にはドル/円相場が100円を突破してしまい、円高阻止を主目的とする追加緩和に日銀は追い込まれるだろうと、筆者は引き続き予想している。その具体的手法を考えてみると、マイナス金利の深掘りは地方金融機関などの収益への急性ショックが危惧されるため、事実上「お蔵入り」したと筆者はみなしている。

 小幅の長期金利ターゲット引き下げは、円高阻止策としては明らかに迫力不足であり、それではおそらく円高を止められないだろう。円の信認という観点からは非常に筋の悪い政策だが、政府の経済対策で(あえて市中消化分の上乗せとして)大幅増発される国債を、日銀がそのまま買い入れるようなポリシーミックスは、事実上の「ヘリコプターマネー」「マネタイゼーション」である。考えてみると、日銀の緩和策が大きなハードルを越えたと海外投資家がみなすような追加緩和策が、消去法で残る。

 つまり、円の信認を自ら傷付ける「リストカット」のような究極の円高阻止策が、やむを得ず浮上するシナリオだということである。急激な円高ドル安による景気悪化・物価下落を放置するか。それとも、「禁断の果実」に手を出すか。まさに究極の選択と言えるだろう。