■(Q2)消費者物価の形成に関する日銀の考え方が硬直的すぎるという声も聞くが。

(A2)筆者も同意見である。インターネット社会が到来し、消費者の購買行動は大きく変化してきているわけであり、物価形成にまつわる様々な構造変化に、日銀はもっとしっかり目を向ける必要がある。

 4月の展望レポート(基本的見解)を見ると、物価の中心的な見通しの章には、「景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、なお弱めの動きが続いている」背景として、「賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っていることが影響している」と書かれている。黒田総裁がよく口にする「デフレマインド」である。

 だが、物価が上がりにくいのは決して「気分の問題」ではない。実物経済において消費者物価が形成される際の需給バランスが緩いまま(大幅な過剰供給)であるからこそ、原油価格にせよ人件費にせよ、コスト増加分を単純に上乗せするような値上げがなかなか通らないし持続しないというのが、筆者の持論である。

 経済全体についての実に大まかな推計である需給ギャップよりも、日銀短観(業種別計数)に含まれている「国内での製商品・サービス需給判断DI」(回答比率「需要超過」-「供給超過」)を、消費者物価に直接関連している3業種についてウォッチする方が、物価が上がりやすいか上がりにくいかについて、はるかに的確かつ容易に把握することができる(図1)。

■図1:日銀短観(業種別計数) 国内での製商品・サービス需給判断DI(回答比率「需要超過」-「供給超過」) 個人消費に直接関連する3業種(全規模合計)
注:直近は18年6月調査における先行き(9月予測)
(出所)日銀

 4月の展望レポートには、先行きの物価見通しとして、「マクロ的な需給ギャップ」改善と「中長期的な予想物価上昇率」上昇から消費者物価は前年比プラス幅を拡大する(はずだ)という、オーソドックスな説明がある。だが、マクロの需給ギャップと物価のリンクは弱まっているのが実情である。足元の物価状況を説明する際には、経済の構造変化などから、目をそむけ続けることはできないだろう。

 日銀は6月18日、日銀レビュー「インターネット通販の拡大が物価に与える影響」を公表。構造要因に焦点をあてた。現実を見据えた前向きな取り組みとして評価すべきだろう。