2018年6月15日、記者会見する日銀の黒田東彦総裁(写真:ロイター/アフロ)

 日銀は6月の金融政策決定会合終了後の対外公表文に「物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている」と記述し、「1%程度」から下方修正した。

 そしてその後の記者会見で黒田東彦総裁は、「このところ消費者物価の前年比伸び率が幾分縮小していることは事実」と認めた上で、「こういった物価動向と、一方で世界経済が極めて順調に推移しているわりには、物価がなかなか上がっていかないという状況については、従来から金融政策決定会合の場でも議論し、スタッフも様々な分析を行っています。7月の経済・物価情勢の展望(展望レポート)に向けて更に議論を深めていく必要があると考えています」と述べた。

 日本経済新聞は7月1日、日銀は7月末に公表する展望レポートで18年度と19年度の消費者物価(除く生鮮食品)の見通しを下方修正する方向で検討に入っており、「足元で物価の伸びが鈍いことを反映する形で、翌年以降の見通しを下げるのは異例だ」と報じた。

 消費者物価が日銀の想定通りに上がってこないという問題について、筆者の見解をQ&A方式でまとめてみた。

■(Q1)物価が上がってこないことを憂慮した日銀による上記の動きを、どうとらえるか。

(A1)「右肩上がり」の日銀物価シナリオが、物価上昇の鈍さという現実によって揺さぶられており、もはや説明責任の観点から放置できなくなったということだろう。黒田総裁は6月15日の記者会見で、「総括的な検証」をもう一度行う必要があるとは考えていないと明言した。しかし実際にはまさに、「総括的な検証パート2」が必要な状況であるように思われる。

16年9月の総括を振り返る

 16年9月の「総括的な検証」は、2年程度での物価目標2%達成を目指す「短期決戦」が失敗した原因を総括することで、金融政策の枠組みを「長期戦・持久戦」対応に切り替える根拠になった文書である。

 そこに2%の物価実現を阻害した主な要因として書かれていたのは、①原油価格の下落、②消費税率引き上げ後の需要の弱さ、③新興国経済の減速とそのもとでの国際金融市場の不安定な動き、以上3点だった。

 こうした「外的な要因」が発生して実際の物価上昇率が低下し、「適合的」な(現実に起こった物価の動きに左右されやすい)期待形成の要素が濃い予想物価上昇率が横ばいから弱含みに転じたという説明を日銀は前面に出し、「金融政策の失敗」は一切認めなかった。

 だが、現在では、①原油価格は上昇しており、②消費増税後の需要の弱さは一巡し名目賃金の伸びはプラスとなっており、③新興国経済は一部で動揺しているが世界経済見通しはまだ下方修正されていないため、16年9月のロジックを今回は使うことはできない。