若い世代が高齢者に向ける視線はかなり厳しい

 筆者がこのペーパーよりも大きな関心を抱いたのが、そうしたアイディアがより強く前面に出ていた上記の約1年前の文書である。2016年5月16日に開催された第18回産業構造審議会総会に提出された、次官・若手未来戦略プロジェクトのディスカッションペーパー「21世紀からの日本への問いかけ」(→資料 ※経済産業省内ページ)がそれ。すでに50代半ばにさしかかっている筆者は内容を一読して、若い世代が高齢者に向ける視線には(本人が意図するとせざるとにかかわらず)相当厳しいものがあるなと痛感させられた。

 「日本の立ち位置」というタイトルがつけられた2番目の章に、以下の記述がある。

最先端技術を活用し、高齢者はずっと働いて

 「バイオ技術の活用で世界に先んじて健康寿命が延び、 AI・ロボット技術の積極導入によるサポートが可能になれば、高齢者も、支えられる側から、むしろ価値創造側に回ることができるのではないか」

 「わが国の平均寿命は戦後と比較して30年延伸。健康寿命も70代に。今後、AI・バイオ技術の導入で健康寿命が延びれば、高齢者は、知識・智恵を活用した人的資源となるのではないか」

 そして、「今後の仮説」と題された章の「基本的な方向性と仮説」には、次の文章がある。

 「高齢者の智恵・人脈・経験等を活かした労働参加の促進が社会的に大きな利益。→ AI、IoT、バイオ技術を活用し、世界最高レベルの高齢者の労働参加(戦後の社会保障・雇用制度の抜本見直し)」

 「第4次産業革命がもたらす所得格差が世界的な課題となる中で、我が国は、①高齢者の労働参加、②様々な『差異』を生み出す人材の創出によって、大きな政府による所得再分配策に依らずとも所得の二極化を解決できるのではないか」

高齢層の就労拡大により、社会保障制度は維持できるか

 「AI・IoT・バイオ技術等を活用し、高齢者の就労を促進することができるのではないか。健康寿命の伸びに実態を合わせていけば、現役世代2人で高齢世代1人を支える構造を今後も維持できるのではないか」

 この「現役世代2人で高齢世代1人を支える構造を今後も維持できる」という見方のエビデンスとして「高齢者の現役参画と生産年齢人口比率の関係」と題した数表があり、①2015年時点で65歳以上人口/15~64歳人口=2.3、②2035年時点で70歳以上人口/15~69歳人口=2.4、③2055年時点で75歳以上人口/15~74歳人口=2.5という数字が、丸で囲ってある。要するに、健康寿命が伸びれば、2035年時点で69歳までの人の多くが就労した状態であることができ(現役世代にとどまることができ)、2055年時点ではこれが74歳までになり得るから、海外からの移民などの積極的受け入れを含む人口対策を強化しなくても、高齢層の就労拡大によって、社会保障制度はなんとか維持できるのではないかという、なんとも大胆な仮説である。

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