(写真=AP /アフロ)

 カナダ・シャルルボワで6月8~9日に開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、首脳が一堂に会して政治・経済における政策協調をアピールする場という本来の姿から、全くかけ離れたものになった。トランプ米大統領の傍若無人ぶり・品位のなさだけが目立った印象である。トランプ大統領は、当初予定より遅れて会場に着いた後、9日午前には退出して米朝首脳会談の場であるシンガポールに向かった(遅刻したにもかかわらず、早退した)。

 討議の場では、鉄鋼・アルミニウム製品への米国の高関税措置を巡り、激しいやり取りがカナダ・欧州と米国の間で交わされた。仏大統領府によると、トランプ氏の言葉は「長々しい、遠慮のない酷評で、G7としては異例の発言だった」(6月10日 朝日新聞)。

 トランプ大統領はカナダに向かう前、記者団に対し「(サミットに)ロシアを入れるべきだ。なぜロシアなしの会合をやるのか」と発言した。「かねて対ロ関係改善に意欲的なトランプ氏だが、復帰すべき具体的理由は説明していない」(6月9日 時事通信)。ロシアに弱みを握られているのか、トランプ大統領のロシアに対する気の遣い方は奇妙である。イタリアは賛成したが、日本は賛否を明らかにせず、英独仏とカナダは反対した。

 筆者が最も驚かされたのは、シンガポールに向かう機内からだったとみられる、トランプ大統領のツイート内容である。今回のサミットの議長国であるカナダのトルドー首相が記者会見で、鉄鋼などに対する米国の高関税措置を「侮辱的」と非難したことに立腹したようであり、同首相を「誠意のない軟弱者」とこき下ろした上で、「G7首脳宣言を承認しないよう米代表団に指示した」と書き込んだ。筆者はスマートフォンでツイートされる内容をリアルタイムで見ていたのだが、書かれた内容がにわかに信じられず、2度読んでしまった。

 トランプ氏が主役になって前代未聞の展開になった、シャルルボワ・サミット。日本のマスコミ各社も、さまざまな解説や解釈を試みている。

マーケットを「リスクオフ」に傾かせる不確実性

 14年のウクライナ介入をうけてG8サミットからロシアを排除した後、G7サミットは「民主主義や自由貿易という『共通の価値観』を軸に結束し、世界を引っ張る枠組みに立ち返った」はずだったが、「今回、肝心の『共通の価値観』が揺らぎ、G7の先行きはかつてないほど見通せなくなっている」(6月10日 朝日新聞)。

 この解説では触れられていないが、16年の英国民投票におけるEU離脱派勝利(ブレグジット)と米大統領選におけるトランプ候補勝利は、「反グローバル化」の強まりという歴史上の大きな流れを象徴していた。今年はイタリアでポピュリスト・右派連立政権が誕生しており、そうした流れが主要国で継続していることが示されている。

 むろん、伝統的な価値観を重視する国・政治家も負けてはいない。

 「価値観のぶつかり合い」は既存秩序を揺るがし、「不確実性」を高め、マーケットを「リスクオフ」に傾かせる。米国株は大幅下落のリスクを内包しており、米長期金利の上昇余地はそう大きくなく、為替は常に円高リスクがある。