【3】「マイナス金利幅拡大」のカードは使いにくい

 「3次元」の金融緩和のうちマイナス金利については、民間金融界から強く反発する声が出ており、少なくとも当面はマイナス幅拡大という追加緩和カードは使いにくい。

 この関連で下記の報道が出ており、大いに注目される。マイナス金利幅拡大が銀行収益に及ぼす悪影響を緩和するための手法として、ECB(欧州中央銀行)が3月に導入を決めたTLTRO2(新たな貸出条件付きの長期資金供給オペレーション)のような仕組み作りを日銀は模索したが、貸出金利低下に拍車がかかる恐れがあるなど収益にネガティブだとして、民間金融界は強い反対姿勢をとったようである。

「マイナス金利、日銀と隙間風=金融界が露骨にけん制」(6月14日 時事通信 より)

「大手銀行関係者によると、日銀は4月の決定会合を前に、民間金融機関への貸出金の一部にマイナス金利を適用する追加緩和策を模索した。日銀から資金を借りた銀行が利息をもらえる案だ」

「これを察知した各行は『銀行も融資先に利息を払って貸さなければならなくなる』と危機感を募らせ、反発を強めた」

「4月会合で日銀はこの案を見送ったが、黒田東彦総裁は『金融政策は金融機関のためにやっているものではない』と述べ、金融界の損得に縛られない姿勢を強調した」

(中略)

「『日銀へのお付き合いはもう限界』。別の大手銀幹部も胸の内を明かした。日銀が異次元緩和路線を突き進めば、その副作用が直撃する金融界との亀裂が深まるのは避けられそうにない」

【4】「戦力の逐次投入ゲーム」は回避する

 1月29日の前回追加緩和から半年も経たないうちにまた緩和を上乗せするとなると、インターバルが短すぎる。白川方明前総裁在任中の2010~12年のように「戦力の逐次投入ゲーム」に日銀がはまってしまい、追加緩和「催促相場」が今後、頻発する恐れがある。

 だが、「物価安定の目標」2%の達成がきわめて難しい上に、為替のトレンドが円高に転換したことを考慮すると、日銀が年内に追加緩和に追い込まれる可能性は、きわめて高い。

 今回の会合前には中原伸之元日銀審議委員による「もう一度、量に戻ったらよい。2019年度末までに名目GDP(国内総生産)を600兆円にするため、日銀は長期国債保有残高の年間増加ペースを現在の80兆円程度から100兆円程度に増やすべきだ。技術的には全く問題ない」という発言を、ブルームバーグが報じた。

 さらに、「国債も100兆、150兆ペースで買い増すことだってできる」との、日銀幹部による強気の発言が報じられている(6月13日 日経QUICKニュース)。

 黒田総裁率いる日銀は、緩和強化路線を突き進む方針を堅持するだろう。筆者を含む多くの債券市場関係者が憂慮する「不毛なマネーゲーム」は、今後もまだまだ続きそうである。

次ページ 「ヘリコプターマネー」の発想の根底には「逃げ」