(3)イタリア情勢という「火種」があること

 ユーロ圏ひいては世界全体の金融市場を揺るがしかねないリスク要因が、イタリアでこのほど発足した、ポピュリスト政党「五つ星運動」と右派「同盟」の連立政権である。この政権が掲げる財政拡張路線は、財政規律を重視する欧州通貨統合の基本理念と正面からぶつかり合う。

 そうした政治的対立の中で、ユーロ圏からの事実上の離脱をイタリアが「ディール」の材料に用いる可能性も排除できない。この「リスクオフ」の材料が金融市場を大きく揺り動かす場合には、金融政策の正常化を目指すECBの動きは、停止せざるを得ないだろう。

(4)ユーロ圏の景気指標減速が4~6月期に入っても続いていること

 ユーロ圏の製造業PMI(購買担当者指数)は、今年に入ってから5カ月連続で低下している。サービスのPMIも、2月から4カ月連続で低下しており、動きが非常によくない。1~3月期の実質GDP(国内総生産)で確認されたユーロ圏の景気減速は一過性のものだという見方がなお支配的である。だが、5月にかけて上記指標の低下が続いていることで、ユーロ圏の景気回復の持続性に疑念が生じている。景気がもたつけば、利上げは難しくなる。

 最後に、国際経済におけるユーロの地位は上がっているのか下がっているのかを、外貨準備の内訳から見ておきたい。結論から言えば、ユーロはどうやら「永遠の二番手」になりそうである。マーケットの世界に筆者が足を踏み入れた30年前も現在も、市場ではごく少数だが、「米ドル暴落(没落)説」を唱える向きがある。だが、IMF(国際通貨基金)が集計している世界の外貨準備の通貨別比率を見ると、「米ドル1強」にはまったくと言ってよいほど変わりがないことが確認される。

 3月30日にIMFが公表した17年10~12月期の外貨準備通貨別比率(通貨別内訳が判明している額に占めるシェア)は、①米ドル 62.70%、②ユーロ 20.15%、③日本円 4.89%、④英ポンド 4.54%、⑤カナダドル 2.02%、⑥オーストラリアドル 1.80%、⑦中国人民元 1.23%、⑧スイスフラン 0.18%。これら以外の通貨が2.50%である<図1・図2>。

■図1・図2: 世界各国の外貨準備 通貨別比率(通貨別内訳が判明している部分についてのシェア)
注:豪ドル・加ドルの個別集計データは12年10-12月期以降のみ、中国人民元については16年10-12月期以降のみ、データベースに記載
(出所)IMF

やはり米ドルは強い

 外貨準備に組み入れる動きが今年の初めにかけて目立ったのが中国人民元である。ドイツ連銀のドンブレト理事は今年1月15日、人民元の外貨準備組み入れを同行が決めたことを明らかにした。これより前、ECBが17年6月に5億ユーロ相当の米ドルを人民元に換えた。

 ベルギーやスロバキアなど、欧州の他の国でも動きがある。また、今年5月の米トランプ政権によるイラン核合意離脱表明時には、中国がイランに原油輸入の人民元建て決済を要求する可能性が報じられた(ロイター)。だが、中国は人民元の対ドル相場を支えるために資本規制を実施するなど、取引自由化に逆行する動きも近年見せている。米ドルの地位を脅かす存在になる可能性は、現状小さい。

 ユーロは、通貨統合発足当初は、米ドルに並ぶ基軸通貨に将来なる可能性があるかに思われた。だが、ギリシャに端を発した債務危機、財政面などの統合の遅れ、そして最近の南欧の政治情勢緊迫(イタリア、スペイン)に鑑みると、米ドルに並び立つ展望は全く開けていないと言わざるを得ない。全体の20%前後の維持で精一杯だろう。

 日本円や英ポンドについては、あえて詳しく説明するまでもないだろう。

 トランプ大統領という型破りの政治家が他の国々を困惑させているが、米ドルが基軸通貨として抜きん出た存在である時間帯は、この先も長い間続きそうである。