資金が不動産業に過剰に向かい続ければ、いずれ反動が

 日銀は2016年4月の金融システムレポートで、金融活動指標のうち「不動産業実物投資の対GDP比率」は引き続き「赤」(上限の閾値を超えて過熱方向に変化)としつつ、「不動産業向け貸出の対GDP比率」は「緑」(安定)のままにした。「幅広い情報を総合的にみれば、不動産市場全体としては過熱の状況にはないと考えられる」という。

 だが、現実問題として「物価安定の目標」2%早期達成の方が、内部的に「マクロプルーデンス」(金融システム全体のリスク状況の分析・評価に基づいた安定確保のための政策対応)よりも優先度がかなり高いとみられる日銀といえども、大都市を中心に地価や取引額が上昇傾向にあること、不動産業向け貸出の伸び率が上昇していることなどから、「マイナス金利環境の今後の影響も含め、不動産市場の動向については、引き続き注意深く見守っていく必要がある」と記述せざるを得なくなっているのが、現在の状況である。

 5月20日の記者会見で日銀の梅森徹名古屋支店長(当時)は、マイナス金利政策が貸し出しの利ざやを圧迫することは避けられないとした上で、「一定のリスクを取らないと収益をあげられない」ため、今後は十分なリスク管理が必要になるという認識を示した。

 日本経済の「実力」に鑑みると高すぎて達成困難な2%の物価目標の達成を目指して金融緩和が強化され、長期金利は極端に低下した。そうした中で、銀行などの資金が不動産業に過剰に向かい続けるとすれば、その反動がいずれ訪れることは避けられないだろう。

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