(写真=ロイター/アフロ)

 日銀が5月24日に発表した3月の貸出約定平均金利は、貸出市場の需給バランスを素直に反映している、日本経済の「根っこの部分」を反映していると考えられる金利が低下基調を維持していることを、あらためて確認するものになった。

 国内銀行の新規(フロー)・総合は0.636%。前月(2月)の0.600%よりも高くなったが、その前の月(1月)の0.693%よりはかなり低く、3カ月連続で0.6%台にとどまった<図1>。変動型住宅ローンでは一部の銀行の間で、日本で最も低い提示金利を競う動きが、足元でもなお続いているようである。

■図1:貸出約定平均金利 国内銀行 (新規・総合)
(出所)日銀

 また、国内銀行のストック・総合は0.932%で、前月から0.008%ポイント低下した<図2>。今よりも金利が高い頃に実行された貸し出しが満期を迎えると、そのうち借り換えられる部分については、競争が厳しいこともあって、足元の低い金利水準が適用されるのが普通だろう。大まかに言うと、日本では資金を借り入れたい需要側の数・金額よりも、資金を貸したい金融機関の数・資金量の方が、はるかに多い状況である。

■図2: 貸出約定平均金利 国内銀行 (ストック・総合)
(出所)日銀

 したがって、たとえ資金調達原価とみられる水準(長い間大まかに1%前後とされてきた)を下回っても、ストックの貸出約定金利はじわじわ下がっていく。ストック商売が基本の銀行業にとって、時間の経過とともに利ざやが着実に縮小していくというのは、実に重苦しい話である。

マイナス金利は主犯ではない

 こうした状況下、市場の内外でしばしば聞かれるのが、銀行収益悪化は日銀が導入したマイナス金利のせいだとする「マイナス金利主犯説」や、「銀行収益支援のための金利引き上げ論・イールドカーブのベアスティープ化(超長期ゾーンの国債利回りが上昇して利回り曲線の傾斜がきつくなること)論」である。

 だが、筆者はそれらの主張に対して、強く否定的である。

 日銀が2016年1月に導入を突如決定して翌月から適用したマイナス金利が「急性ショック」的に銀行貸出の金利水準を押し下げた(利ざやを急縮小させた)ことは事実である。けれども、それはあくまで、貸出市場の需給バランスが非常に緩いという大きな枠組みの中での一幕であり、貸出金利低下・利ざや縮小という大きな流れの「主犯」というわけではない。

 貸出約定平均金利(新規・総合)のグラフを一瞥すれば、そのことは容易に理解されるだろう。仮に日銀がマイナス金利を解除するとしても、貸出金利の右肩下がりの基調がそれで持続的に反転するとは予想し難い。