レアルが下落を続ければ、輸入品の価格上昇を通じてブラジル国内のインフレ懸念が増大する。同行のゴールドファイン総裁は4月10日の上院公聴会で、5月に追加利下げをしてから停止するのが適切としていた。

 また、同総裁は日本経済新聞の5月2日朝刊に掲載されたインタビューの中で、米金利上昇による新興国からの資金流出について「米金融政策の正常化によるもので想定内だ」としつつ、一層の利下げ余地があると示唆していた。しかし、市場の予想に反して、5月のCOPOMで政策金利は据え置かれた。声明文はその理由を「インフレ見通しのリスクバランスが最近変わった」からであるとした。

 主要新興国の中ではロシアでも、自国通貨安を背景に、利下げが終わりかけている。同国の中央銀行は18年に入ってから2月と3月に0.25%幅で追加利下げを行ったが、4月27日は主要政策金利を7.25%に据え置いた(据え置きは17年7月以来)。

構造変化によって、賃金物価の上昇が鈍化

 その後、ロシア中央銀行のユダエワ第1副総裁は5月21日、同行は利下げに踏み切る理由も据え置く理由もあるという認識を示した。ロシア中銀は年内で利下げ局面を終了させる計画だったが、米国による対ロシア制裁をうけてルーブルが急落したため、この計画を保留せざるを得なくなっており、金融政策を決める次回6月15日の理事会については「据え置きにも利下げにもつながる材料がある」という。

 中国とインドも加えた代表的な4つの新興国の主要政策金利合計値を、筆者は継続的にウォッチしている。5月末時点では24.1%である。<図2>

■図2:BRICs(南アフリカ共和国を含まない主要新興国4か国)の中央銀行の主要政策金利合計値
■図2:BRICs(南アフリカ共和国を含まない主要新興国4か国)の中央銀行の主要政策金利合計値
注: 月末値を合計。ブラジルはSELIC。ロシアは13年9月に主要政策金利を公定歩合(リファイナンス金利)から1週間物レポ入札最低金利に変更した。インドはレポレート。中国は1年物貸出基準金利。
(出所)BRICs各国の中央銀行データより筆者作成

 40%を超えていたこともあるこの合計値が、米国株高を背景とする「リスクオン」の中で大幅に下がることにより新興国の経済が刺激されて、「世界同時好況」という構図が出来上がった。

 だが、それが徐々に崩れ始めたことを、新興国の主要政策金利合計値の下げ止まりと、その主因であるブラジルやロシアの利下げ停止が示している。

 構造変化によって賃金・物価の上昇が鈍くなった現在、米国・欧州・日本のいずれにおいても長期金利の上昇余地は限られるというのが、筆者の基本認識である。

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