パウエルFRB議長、それからクオールズFRB副議長、そして6月18日にニューヨーク連邦準備銀行総裁に転任するウィリアムズ・サンフランシスコ連邦準備銀行総裁の3名は、最近の発言内容から考えて、利上げを重ねていく中で今後十分起こり得る逆イールドについて、やや軽視する姿勢をとっているようである。

 しかし、だからと言って、長短金利逆転を無視して利上げを続けることが妥当であるとは、筆者は全く思わない。株式市場の心理が不安定化して、急落が起きることも考えられる。市場の警告はそれ相応に、真摯に受け止めるべきだろう。

 今年のFOMC(連邦公開市場委員会)で投票権を有する地区連銀総裁の1人であるボスティック・アトランタ連邦準備銀行総裁は5月16日、「われわれはそれ(逆イールドになることのリスク)について認識している。それが起きないようにするのが私の責務だ」「逆イールドが起きないことが望ましい」と述べた。

 最近はハト派寄りの姿勢をとることが多くなっているブラード・セントルイス連邦準備銀行総裁は5月11日、「もしFRBが利上げを続け長期金利が上昇しなければ、今年後半か来年前半に長短金利の逆転があり得る」「サンフランシスコ連銀の最近の調査によれば、長短金利逆転は景気後退の確かな兆候だ」と発言。

 14日には「年内もしくは19年初旬に逆イールドとなるリスクがある」「実際に逆イールドが起きれば、米経済にマイナスのシグナルを送ることになる」「逆イールドに至った後ではなく、むしろ現段階で争点となることを望む」「議論の行方を見守りたい」と主張した。

 このほか、代表的なハト派の1人であるカシュカリ・ミネアポリス連邦準備銀行総裁は5月21日、「債券市場の利回り曲線を注意深く見ていく」「長短金利の逆転は、景気後退の予兆を示す最も的確な現象だ」と述べた。

 「逆イールド」の回避が自分の責務だとしたボスティック・アトランタ連銀総裁や、そうなるよりも前にこの問題を議論すべきだとしたブラード・セントルイス連銀総裁の見解に、筆者は賛成である。

(4)米国への投資マネー還流(リパトリ)による新興国経済の悪化

 アルゼンチンやトルコといった個別の悪材料が目立つ新興国が、投資マネーの流出によって、このところ揺さぶられている。

アルゼンチンはIMFに支援要請、ブラジル中銀が利下げ停止

 アルゼンチンはIMF(国際通貨基金)に支援を要請した。米国の利上げがこのまま続くようだと、米国株大幅下落を背景とする「リスクオフ」への傾斜、リパトリの活発化を通じて、「世界同時好況」は終えんに向かうのではないかと、筆者はみている。

 さほど目立つニュースではなかったが、世界経済の動向にとって重要な意味を持っていたのが、5月16日に明らかになったブラジル中央銀行による利下げ停止である。

 同行の金融政策委員会(COPOM)は16年10月から18年3月まで12会合連続で、主要政策金利(SELIC)を引き下げた(14.25%から過去最低の6.5%まで、7.75%幅)。

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