(1)米国の景気指標に減速感が出てくる公算大 

 「トランプ減税」による個人消費への刺激効果は、想定よりもやや後ずれして表面化した。だが、それは「賞味期限」のある話である。

 また、需給ひっ迫とイランなど中東の地政学的リスクの両面から強含んだ原油価格が今後さらに水準を切り上げるようだと、ガソリン小売価格が1ガロン=3ドルを超えて上昇し、「ドライブシーズン」に入っている米国の消費者に悪影響を及ぼすことになる。

 米エネルギー情報局(EIA)が5月28日に発表したデータで、レギュラーガソリンの全米平均小売価格(税込)は1ガロン=2.962ドル。「黄色信号」が点灯する3ドルまであと一息になった。仮に4ドルまで上昇するようだと「車社会」である米国の個人消費にかなりの悪影響が及ぶ「赤信号」が灯る。<図1>

■図1:米国におけるガソリン(レギュラー)平均小売価格
■図1:米国におけるガソリン(レギュラー)平均小売価格
(出所)米エネルギー情報局(EIA)

(2)米国株の再度の不安定化・急落

 「トランプ減税」による企業収益のかさ上げがはく落すると、米企業収益の伸び率は落ちる。最近進んでいる対欧州通貨や対新興国通貨を中心とするドル高も、米国の企業収益にはネガティブである。また、米長期金利が一段上昇するということは、投資対象としての株式の魅力が削がれることにもつながる。

 さらに、米国債イールドカーブで後述する「逆イールド」が発生するようだと、リセッション(景気後退)への警戒感増大で、株式市場参加者のセンチメントは悪化・不安定化しやすくなる。

(3)米国債利回り曲線(イールドカーブ)の一層のフラット化・「逆イールド」発生

 日本と異なり米国では、債券市場の健全な価格形成機能が維持されている。インフレリスクが乏しい中であるにもかかわらず、半ば強引に利上げを続けることがもたらすもの、景気減速・物価鈍化ひいてはリセッション到来を、市場が警告していると言える。

 2000年にITバブルが崩壊した時も、06年に米住宅バブルが崩壊した時も、米国債のイールドカーブ上では「逆イールド」が観察されて、その後のリセッション(景気後退)の到来を予告するシグナルになった。米10年債と米2年債の利回り格差のマイナス化が、「逆イールド」の代表例である(これは正確には長期ゾーンと中期ゾーンの金利差なのだが、「長短金利逆転」と形容されることも少なからずある)。

景気後退のシグナル「逆イールド」の可能性も

 ポジションの傾きに応じた振れはあるものの、FRBが利上げを継続する中で、米国債のイールドカーブは趨勢としてフラット化してきている。0.25%幅であと2回利上げを行えば、2年債と10年債について逆イールドが発生する可能性が高い。

 むろん、今回の局面では年金マネーなどのイールドハント(相対的に金利が高い債券を選好しての購入)によって米30年債利回りが需給的に押さえ込まれている面があり、イールドカーブにはその先端部分から需給面でフラット化圧力が加わっている。したがって、長短金利逆転が発生する場合でも、それが100%、リセッション接近の警告シグナルであるとまでは言えない。

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