「われわれは数か月待たなければならない」

 マイナス金利の景気・物価刺激効果は時間をある程度かければ出てくるはずだと、日銀は主張し続けている。政府も同様のスタンスだ。では、いつまで待つつもりなのだろうか。

2016年1月、「マイナス金利」の導入を決めた時の黒田東彦日銀総裁 (写真:ロイター/アフロ)
2016年1月、「マイナス金利」の導入を決めた時の黒田東彦日銀総裁 (写真:ロイター/アフロ)

 独紙ベルゼン・ツァイトゥングが5月11日に掲載した黒田東彦日銀総裁のインタビューには次の発言があった(同紙ホームページの英文記事から筆者和訳)。

 「金融市場への(マイナス金利の)効果はすでに非常に明確で、意図した通りとなっている。しかし、実体経済への効果を見るために、われわれは数か月(a few months)待たなければならない。われわれには少々忍耐が必要だ」

 「多くの企業家がわれわれに対して、今後数か月のうちに(in the coming months)投資を強化するつもりだと語っている。これはわれわれの日銀短観においても見られることだ。グローバル経済のある程度の不確実性や、金融市場のボラティリティーにもかかわらず、日本の企業セクターは非常に堅固な投資ポリシーを維持している。昨年度も、今年度もだ」

(独紙ベルゼン・ツァイトゥング 2016年5月11日 から)

 これより前、マイナス金利が実体経済にプラスの効果を及ぼすまでの時間差について、黒田総裁は4月28日の記者会見で次のように述べていた(日銀ホームページから引用)。

 「これが設備投資、住宅投資その他、国内需要にプラスに効いてくるというのは間違いないと思うのですが、それまでの間、若干のタイムラグがあるということは、従来、認められていることです。どのくらいかというのは、具体的に申し上げるのはその他の事情にも関連しますので、難しいです。1、2か月ですぐに出るということではなくて、もう少しかかると思いますが、半年も1年もかかるということではないと思っています」

(日本銀行ホームページ 総裁定例記者会見 4月28日 要旨

設備投資が伸びにくいのは、金利以外の問題

 押し下げられた実質金利を経由して、マイナス金利が設備投資や住宅投資を刺激する効果に、日銀は大いに期待している。だが、そうした効果は小さなものにとどまるだろう。設備投資が伸びにくいのは、金利水準の問題ではなく、日本国内の将来の需要見通しが人口減・少子高齢化ゆえに縮小方向のままだからである。住宅投資では、首都圏を中心とするマンション販売価格の大幅上昇が足元でブレーキになっており、住宅ローン金利の高低は重要な問題点ではない。時間の経過とともに、筆者を含む民間エコノミストと日銀の、どちらの見方が妥当なのかが、自ずと明らかになるはずである。

次ページ 日銀の追加緩和の時期を推測すると…