このような状況下、原油価格上昇を抑える方向に働くと期待されているのが、値上がりで投資採算が向上している米国のシェール会社による原油増産である。いわゆる「シェール革命」によって、米国はいまやロシア、サウジアラビアとともに、世界の産油国トップ3の一角となっている。米国が本格的に原油増産に動けば、サウジアラビアやロシアの協調減産に対し、カウンターで強力に作用するのではないかという見方である。

米産油量増加にも大きな疑問符

 だが、意味合いの重い報道が出てきている。米紙ウォールストリートジャーナルは4月19日、テキサス州とニューメキシコ州にまたがるシェールオイル生産の中心地パーミアン盆地で、石油会社はパイプラインや専門的人材・機材などの面でボトルネックに直面しているとして、右肩上がりの米産油量増加のシナリオに大きな疑問符を付けた。同様の記事はその後、英紙フィナンシャルタイムズにも5月11日に掲載された。

 また、米国のシェール会社大手は、年間の投資計画や株主への利益還元計画をすでに固めてしまっているため、足元で原油価格が急上昇したからといって、年度途中で急に計画を上方修正して増産に乗り出すことにはならないのだという。

 しかも、OPECやロシアなどが実施しており、これまでのところ事前の期待以上の成功を収めている原油の協調減産を、長期的・恒久的な枠組みに転換することに、減産を行っている国々の大半が賛成しているもようである。

 こうしたサウジアラビアの原油価格持ち上げ重視への戦略変更・協調減産の長期化見通し・原油在庫水準の切り下がりといった需給面の要因に加えて、イラン情勢を中心とする中東の地政学的リスクも、原油価格上昇の大きな原動力になっている。

 米英仏によるシリア・アサド政権への攻撃は一回限りのアクションだったわけだが、イラン(およびその宿敵であるイスラエル)の今後の動きという大きな不確定要因があるため、原油価格に上乗せされるリスクプレミアムは、当面縮小しにくい。

 米国のトランプ大統領は、大統領選で掲げた「アメリカファースト(米国第一)」色の濃い公約に沿った実績を積み上げることにより、数々のスキャンダルをかわしつつ、11月の中間選挙での共和党勝利(上下両院での過半数死守)につなげようとしている。5月8日にトランプ大統領が表明したイラン核合意からの離脱は、その一環と言えるだろう。「内向き」に傾斜する米国に対し、ユンケル欧州委員会委員長はブリュッセルで行った演説の中で、米国にはもはや世界の他の部分と協力するつもりはない、と厳しく批判した。

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