個人が借りたい金額よりも、金融機関が貸したい金額の方がほぼ恒常的に多くなっているため、需給のバランスは緩く、約定金利は低下しやすい(モノの値段になぞらえると値崩れしやすい)。

 次に、企業向けについても同じ手法で数字をとると(大企業・中堅企業・中小企業別のデータを使用)、貸出市場の需給バランスを示す数字はマイナス(供給超過)になっている時期がほとんどである<図3>。

図3:貸出市場の需給バランス 企業向け(資金需要判断DI-貸出運営スタンスDI)
(出所)日銀資料より筆者作成

 08年9月に「リーマンショック」が発生して不安心理が強まり、予備的な(事前に予測できないような資金繰り面の万が一の事態に備えるための)資金需要が膨らんだ時期には、大企業で+50という大幅なプラス(需要超過)を記録したこともあった。しかし最近では、大企業の手元資金量が潤沢すぎると問題視する声が一部で出ている。当然のことながら、そうした企業の資金需要は弱い。

 住宅ローンなどの個人向けだけでなく、企業向け貸し出しでも金融機関どうしの競争は相変わらず激しいようであり、利ざやには縮小圧力が加わりがちと考えられる。

 主要銀行貸出動向アンケート調査の利ざや設定DIについて、過去3カ月の実績と、1つ前の調査に含まれている今後3カ月間についての利ざや設定の変化方針についてのDIの差をとってみたい(実績-3カ月前における設定変化方針)<図4>。

図4:利ざや設定DI 実績値から3カ月前における変化方針のDIを差し引いた数字
(出所)日銀資料より筆者作成

 なお、利ざや設定DIの算出式は、(「拡大」とした回答金融機関構成比-「縮小」とした回答金融機関構成比)である。

足元の対応で手一杯

 16年1月に日銀が突然マイナス金利を導入し、2月から実施したことに伴う貸出利ざやの予期せぬ(ショック的な)下振れを、図から確認することができる。その後、状況は落ち着いたようであり、利ざやの実績値と前回調査における(3カ月前の)利鞘設定変化方針のかい離幅は縮小している。だが、上位・中位・下位格付先のいずれにおいても、数字が持続的にプラスになる(事前に設定した方針よりも利ざやが上振れる)ような状況は想定し難い。

 人口減・少子高齢化の着実な進行という構造的な下押し圧力が経済に作用し続けており、そうした流れを食い止めるような強いイニシアチブを政府がとってくれない中で、明るい将来像を描くどころか、足元の収益確保や数年というスパンでの生き残り策を考えることに汲々としている金融機関が少なくないというのが、実情ではなかろうか。資金需要の基盤である国内経済の先行きに人口減・少子高齢化という「大枠」がはまっているだけに、金融機関経営の前途はきわめて多難と言わざるを得ない。

 地域統合やコストカットは、抜本的解決策にはならないだろう。政府による人口対策の強力な展開とともに、収益源の多角化を支援するような金融機関の業際規制緩和が望まれる。