だが、いつでも追加緩和に動く用意があるといった市場の追加緩和期待を保とうとするメッセージが、黒田東彦総裁の記者会見における発言では不足していたため、失望感から市場は大幅な株安・円高で反応。日本が大型連休期間に入っており値動きが大きくなりやすいことも手伝って、ドル・円相場は5月3日に一時105円台まで円高ドル安に動いた。日銀が置かれた立場は、これまで以上に苦しいものになっている。

 そうした中、経済・金融市場動向に関する機関投資家向け説明などの場で「日銀の黒田総裁は再任されるのか?」という質問が、最近出てくることがある。

 黒田氏は2013年3月20日に総裁に就任し、任期満了を待たずに退任した白川方明前総裁の残り期間を務めた上で4月9日に再任されたので、任期満了の2018年4月8日を越えて続投する場合、3期目になる。

 以前は、黒田総裁の年齢が漠然と意識されて、他の人に交代するのではないかという見方が、市場では多かったように思う。ところが、日経新聞の2月14日朝刊に掲載された同社の佐藤賢政治部次長執筆のコラム「首相のレガシーは何か(風見鶏)」に以下のような記述があったため、再任説が市場でも意識されるようになった。

首相周辺には、任期が18年4月までの日銀の黒田東彦総裁の再任論が早くも飛び交う。再任ならさらに5年の任期を得て、安倍首相なきアベノミクスの継続に布石を打つことになる。


2016年2月14日付 日本経済新聞「風見鶏」から

黒田総裁の再任についての3つのポイント

 ここでは黒田総裁の再任問題について、3つのポイントを提示しておきたい。

①年齢の問題

 1998年の新日銀法施行後の歴代日銀総裁の退任時年齢を見ると、同年から2003年にかけて在任した故速水優氏の77歳が最高齢記録である(あと5日で78歳だった)。福井俊彦氏は72歳、白川方明氏は63歳である。

 黒田氏は1944年10月25日の生まれで、現在71歳。日銀総裁の任期が満了する2018年4月8日時点では73歳である。インターバルなしに再任されて日銀総裁をさらに5年間務めた場合、2023年4月の任期満了時は78歳で、故速水氏の記録を更新することになる。

 ちなみに、米国で中央銀行トップであるFRB(連邦準備制度理事会)議長として長期間在任したグリーンスパン氏は、1926年3月6日の生まれ。2006年1月31日にFRB議長を退任した時には79歳だった。黒田氏が2023年4月まで日銀総裁を務めた場合の78歳を、1つ上回る記録である。