S&Pグローバル・レーティングは4月13日、日本国債の自国通貨建て長期ソブリン格付け(A+)などのアウトルックを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げたと発表した。その主な理由として公表文(和文)に掲載されたのは、「経済成長見通しが名目、実質ともに改善しており、それが今後3~4年にわたり徐々に財政パフォーマンスにプラスに働く可能性が高い」「名目経済成長率が2%を超え、実質実効金利がマイナスであることにより、政府債務残高がS&Pの従来の予想よりも早く安定化するとのS&Pの見方を反映している」である。

 基礎的財政収支(PB)の20年度黒字化という、日本政府が長く掲げてきた財政健全化目標の達成が絶望的になり、6月の「骨太の方針」で健全化の道筋を描き直す運びになっている。その内容を見極めるよりも前の時点で、経済成長見通しを主な理由にして有力格付会社が上記の決定をしたことに、筆者としては違和感を禁じ得ない。
 同様の違和感は、別の有力海外格付会社の担当者が日本の財政運営の関連で昨年秋に発したコメントでも、筆者が大いに抱いたところである。

続々プラス評価する海外格付会社

 ロイター通信は17年10月3日、「消費税の使途変更はプラス」と題した、米格付会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスのシニア・クレジット・オフィサー、クリスチャン・ド・グズマン氏のインタビュー記事を配信した。

 同氏は、安倍首相が打ち出した消費増税の使途変更について、「プラス面がマイナス面を上回る」と指摘。日本政府が中長期的に財政健全化への姿勢を堅持すればPB黒字化の達成時期は「それほど重要ではない」「そもそも20年度までに達成できるとは考えていなかったため、(財政面での)懸念が強まったわけではない」「中長期的に財政健全化にコミットしていれば、具体的にいつ目標が達成できるかは、それほど重要ではない」とした。

 こうした格付会社の動きから自然にイメージされるのは、10%への消費税率引き上げが安倍首相の政治判断で秋から年末年始のどこかで延期される場合でも、これら2社による日本国債の格下げはおそらく起こらないだろうということである。

 ちなみに、海外のもう1つの有力格付会社であるフィッチ・レーティングスは4月26日、日本国債の格付けを「A」に据え置き、アウトルックは「安定的」のままとした。この格付会社による日本国債の格付けは上から6番目で、他の2社よりも1ノッチ低い。

 債券市場が財政面のリスクを警告する機能も消えてしまっていることを考え合わせると、6月に財政健全化のプランが練り直されても、実態としては、財政規律の弛緩がますます進んでいきそうな雲行きである。