「事務職」の求人倍率は低迷、余剰労働力が潜在的に多い

 最も目立つのは、ホワイトカラーの代表例と言えそうな「事務的職業」の停滞ぶりだろう。0.5倍未満の水準での上下動に終始している(2017年2月は0.48倍)。以前より潜在的な余剰人員がかなり多いのではないかと言われており、この先はAIに職を奪われる脅威を最も感じるであろう職業である。ちなみに、2015年の労働力調査年報によると、就業者数の年平均6376万人のうち「事務従事者」は1256万人で、19.7%を占めている。これらの人々のうち何割かは、必要に応じた職業訓練などを経て、人手が足りない職業にシフトすることが可能と考えられる。

 有効求人倍率の上昇ぶりが目覚ましく、2017年2月には3.14倍に達した「サービスの職業」の中身を見ると、「介護サービスの職業」「保健医療サービスの職業」といった資格要件が基本的にある職業と、「接客・給仕の職業」など外国人受け入れなどで不足を埋められる職業が混在している。前者については、職業訓練の支援、資格要件の緩和などが、行政のとるべき施策の基本線になる。

高技能労働者の不足は、日本だけではない

 「専門的・技術的職業」は、2017年2月の有効求人倍率が2.16倍。「建築・土木・測量技術者」(5.19倍)、「情報処理・通信技術者」(2.48倍)、「医師、薬剤師等」(6.27倍)などが含まれる。なお、高技能労働者の不足は米国でも現在見られており、日本固有の現象ではない。

 「販売の職業」は、2017年2月の有効求人倍率が1.96倍。この職業の関連では、過剰供給の削減(不採算店舗閉鎖や営業時間短縮など)、ITを活用した省力化・合理化投資、外国人労働者の活用により人手不足をかわそうとする努力を、経営側は今後も続ける可能性が高い。

人手不足で強い制約が経済成長に加わり続けることはない

 やや繰り返しになってしまうが、「人手不足」の問題によって賃金が大幅に底上げされて(サービス分野の価格がゼロインフレ状態から脱却してシフトアップし)物価目標2%が達成される可能性や、経済成長に強い制約が加わり続ける可能性は小さいというのが、筆者の考えである。

※5月2日と9日の当コラムは休載します。次回配信は5月16日になります。

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