人手不足問題を考える時、筆者が必要と思う「5つの観点」

 だが、そうした流れがこれまでの延長線上で単純に続いていくとみるのは妥当ではないというのが、筆者の見解である。「経済は生き物」だとよく言われるが、このドラマのプレーヤーたち(企業や家計)は、状況の変化に対応してさまざまな動きを見せるわけであり、柔軟かつ動態的な思考展開が望ましいのではないか。

 次の5つの点を忘れることなくこの問題は議論されていくべきだと、筆者は考えている。

【1】経営側のさまざまな「工夫」や「才覚」

 人員面のボトルネックの解消と賃金コストの総額の抑制に向けた経営側のさまざまな「工夫・才覚」を軽視するべきではない。日本企業は国境を越えた厳しい競争にさらされ続けている。セルフレジ導入など省力化・合理化投資を行うことによってオペレーションに必要な人員を減らしたり、宅配業者で見られ始めたように何らかのインセンティブを提示して業務の総量を抑制したりといった工夫が、さまざまな業種で展開される可能性が高い。金融界におけるフィンテックの取り組みも、大いに注目に値する(後述【3】)。

【2】過剰供給を解消して需給をマッチさせていくこと

 人口動態からくる消費市場の長期縮小見通しにもかかわらず、日本経済では過剰供給構造が温存されているため、若年人口が減少する中で必然的に「人手不足」問題が発生している面が大きい。不採算店舗の閉鎖など、さまざまな形で過剰供給を解消して需給をマッチさせていくという構造政策の発想も、議論に加味していく必要がある。

【3】AIが仕事を奪っていく可能性

 AI(人工知能)の急速な発達が、さまざまな業種・職種における将来の余剰人員の大量発生に結びつく蓋然性が、着実に大きくなっている。つい先日までAI活用による人余り(はじき出された雇用の受け皿が見当たらないという問題点)が議論されていたのに、今度は急に人手不足が議論されることに、バランスの悪さを筆者は感じざるを得ない。

【4】外国人を受け入れるという選択肢

 日本の人口減・少子高齢化を固定的な前提に据えた議論に終始せず、外国人受け入れによって労働力を増やしていくという選択肢を直視することが必要である。たとえば介護・看護分野において、高齢化が急速に進む中で不足する人材を海外から補充することに、もはや大きな異論は出てこないだろう。

【5】単純労働と技能労働を区別した議論

 単純労働(未経験あるいは無資格で従事できる職種)と技能労働(何らかの技能や資格要件がある職種)とは、ある程度区別して議論すべきである。単純労働は、日本語ができない外国人でも埋め合わせが早期に可能であり、現場レベルでは実態としてそれが進んでいる。

 ここで、上記⑤の関連で、厚生労働省が発表した2月の一般職業紹介状況から職業別の有効求人倍率の推移を見ておきたい。

 同月時点で有効求人数が多い上位4つの職業、すなわち「サービスの職業」(59万5183人)、「専門的・技術的職業」(49万3419人)、「販売の職業」(28万3951人)、「事務的職業」(24万6434人)を取り上げる<■図1>。

■図1:職業別有効求人倍率 2017年2月時点で有効求人数が多い上位4つの推移
■図1:職業別有効求人倍率 2017年2月時点で有効求人数が多い上位4つの推移
注: 2012年3月以降は2011年に改定されたデータを表示しており、それ以前とは断層がある。
(出所)厚生労働省
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 グラフからは、4つの職業の有効求人倍率の動き方にはかなり大きなばらつきがあることがわかる。

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