若者の間で「民主主義離れ」が進んでいる?(写真=Bloomberg/Getty Images)

 もう数年前のことになるが、同じセクションに属している中国人の若手女性社員から次のようなダイレクトな質問を突然受けた筆者は、日本とは大きく異なる環境の中で生まれ育つ中で根付いた認識(というよりも感覚)の違いのあまりの大きさに、はっとさせられた。

「民主主義は、本当に良い制度なのですか?」

 「日本では選挙をする民主主義の政治ですが、これが本当に良い制度なのですか?」

 筆者の会社でもう20年以上も続けている、早朝の新聞各紙チェックのルーティンワークを若手社員数人としていた時の出来事である。学校教育で日本の政治制度や憲法を学ぶ中で、少なくとも筆者くらいの世代の多くの日本人にとっては、西欧型の民主主義という政治制度はいまさら疑うまでもないベストの選択であり、国民が主権者として政治の意思決定に能動的に参加できるという点で一党独裁などよりも優れているという位置付けではないだろうか。

 だが、そうした教育を受けてきていない国の人の目には、日本の実情を見ていると、素朴な疑問が浮かんできてしまうようである。人口減・少子高齢化を克服することができないまま「地盤沈下」を続けている地方経済の状況。閣僚を含む政治家に相次いで浮上するスキャンダル。無党派層が大きく動くといった「風」でも吹かない限りマスコミ各社による事前の情勢分析通りになるケースが大半で、一種のルーティンのようにしか見えない選挙。いわゆる「開発独裁」の方が、指導者層さえ優秀であれば、意思決定が早く、経済成長に有利ではないかという見方をする人が出てきやすい。

 また、そうした西欧型の民主主義とは異なる道を歩んできている中国のやり方こそが正しいという教育やキャンペーンが、経済が急速に発展して豊かになった中国の人々の間では素直に浸透しやすいという事情もあるだろう。

 上記の質問を受けた頃には、中国経済が成熟して低成長に移行するとともに、中国の人々の関心事が経済成長(ありていに言えばお金もうけ)から政治の民主化へと徐々に向かい、そのスピードやプロセスは予想が難しいものの、中国の政治制度は民主主義の要素を増していくのではないかと、筆者は考えていた。

 しかしその後、日本の若者の考え方やライフスタイルが自分のような世代とは大きく異なることに気付いた筆者は、「これまでと違う日本」が現在の20代以下を中心に形成されつつあるという見方を徐々に強めている。そしてそうした一種の構造変化は、民主主義という日本の政治制度についての基本認識でも、徐々に表面化しつつある。