(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

 韓国との関係改善を足掛かりにして、北朝鮮が米国との直接対話による状況打開を模索する姿勢を鮮明にしており、朝鮮半島有事のリスクが低下。米トランプ政権の保護主義的な政策など米国株にとって足元は悪材料山積と言える状況だが、上記の面に限っては当面の安心感が広がっている。3月5~6日に北朝鮮を訪問した鄭義溶(チョン・ウィヨン)韓国国家安保室長が6日の記者会見で明らかにした合意内容と、それに関する筆者コメントは下表の通りであり<図1>、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が予想以上に譲歩した印象が強い。

■図1:韓国の鄭国家安保室長が北朝鮮訪問で得られた成果として3月6日に記者会見で発表した内容
韓国高官の北朝鮮訪問で得られた成果筆者コメント
①南北首脳会談板門店の韓国側の建物(平和の家)で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が4月末に首脳会談を開催することで合意。過去2度の南北首脳会談(00年6月・07年10月)はいずれも北朝鮮・平壌での開催。今回は初めて韓国で開催される。メンツを重んじる北朝鮮の指導者としては、異例の柔軟姿勢。板門店の北朝鮮側の施設(板門閣)での開催を主張する選択肢もあった。
②ホットライン設置軍事的緊張緩和などのため南北首脳間にホットラインを設置し、首脳会談前に初の通話を実施。電話をとらなければいつでも音信不通になり得るわけだが、一応は両国間の平時の緊張緩和に貢献。
③朝鮮半島非核化北朝鮮は「朝鮮半島の非核化の意思」を明らかにし、北朝鮮への軍事的脅威が解消され、北朝鮮の体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がないことを明確にした。鄭室長は、金委員長が「非核化の目標は先代の遺訓であり、先代の遺訓に変わりはない」と明言したことが注目に値すると強調。「朝鮮半島の非核化」は、北朝鮮が核武装を放棄するのみならず、米軍が韓国に核兵器を配備しないことも含む概念である。体制維持への保証をしっかり取り付けない限り、いわば「命綱」の核兵器を北朝鮮が安易に手放すとは考え難い。むしろ、南北対話や米朝協議で稼ぐことのできる時間を利用して、ミサイル技術などの高度化の研究を進める可能性がある。また、北朝鮮への軍事的脅威の解消とは、北朝鮮が望んでいる在韓米軍撤退を含む話である。
④米朝協議の用意北朝鮮は、非核化問題協議・米朝関係正常化のため、米国と虚心坦懐に対話する用意を表明。経済制裁強化によって外貨やエネルギーの面で苦しくなった北朝鮮が、協議の前提としての「非核化」については(実際にそうする気がなくても)一応容認する立場に転じたと受け止められる。
⑤挑発行動の停止対話が続いている間、北朝鮮は追加の核実験や弾道ミサイル発射実験など戦略的な挑発を再開しないことを明確にした。鄭室長は、核兵器はもちろん通常兵器も韓国に対して使用しないことを金委員長が確約したということも明らかにした。挑発行動の停止は、対話・交渉が続く間に北朝鮮がとる姿勢としては当たり前のことだろう。通常兵器の不使用についても同じ。また、冷静に考えれば、核・ミサイル技術が北朝鮮の望むレベルまですでに高度化したことから追加で実験を行う必要が薄れている。
⑥南北交流の継続韓国のテコンドー師範団と芸術団の平壌訪問を北朝鮮が招請。韓国との芸術面での交流は、交渉・対話で北朝鮮に有利な雰囲気を作り出すのに貢献し得る。4月1日・3日の韓国芸術団平壌公演には、国民的歌手チョー・ヨンピル、「少女時代」ソヒョン、女性アイドルグループ「Red Velvet」などが参加。
(出所)各種報道をもとに筆者作成