北朝鮮の核兵器・弾道ミサイル実戦配備は、実際に戦争を起こして勝とうとする動きではなく、米国を直接交渉の場に引きずり出して北朝鮮の現在の政治体制維持への保証をとりつけることを最大の狙いとした「政治的なカード」だというのが、コンセンサスになっている。武力で朝鮮半島の統一を行おうとしても、米国との軍事力・継戦能力の差は歴然としている。金委員長が軍事的に暴発するようだと、それは体制の崩壊に直結するだろう。

 だが、何が起きるか分からないのが現実世界である。発生する確率は低いもののひとたび発生してしまうと損害が甚大なものとなるテールリスクに備えて、北朝鮮が自暴自棄になり米韓と交戦状態に入るケースで市場がどう動くのか考えておくことは、全くの無駄ではないだろう。

万一の時のシナリオを検討する

 現時点での筆者の考えを整理すると、次のようになる。

(1)【戦争になれば、円買いが急速に進む】
 第2次朝鮮戦争が発生した場合には初期反応として、「リスクオフ」の円買いが急速に進む可能性が高い。

 交戦国の通貨である米国のドルと韓国のウォンは、条件反射的に売りを浴びるだろう。米国に関しては戦費による財政赤字拡大、韓国に関しては戦争被害・マインド悪化・終戦後に起こり得る北からの難民大量流入という難題が悪材料視されやすい。北朝鮮の隣国である中国との経済関係が深いオーストラリアドルも、対円で急落するだろう。

(2)【ミサイルが着弾するなどの被害が出れば、円には売り戻しが入る】
 戦闘地域が朝鮮半島とそのごく近くにとどまれば、円は逃避通貨という位置付けのままだろう。しかし、北朝鮮のミサイルが日本の領土に着弾したり、特殊部隊が日本海側から上陸して在日米軍基地や原子力発電所を襲ったりする事態になると、円の逃避通貨としての信頼感が弱まり、いったん買われた円にはある程度売り戻しが入ると予想される。もっとも、そうした緊急事態は短期間で終息する可能性が高いため、「逃避通貨」としての円の位置付けは維持されるだろう。

(3)【為替相場の動きが急激な場合は、協調介入実施の可能性】
 為替相場の動きがあまりにも急激だと判断される場合、要するに円高ドル安の進み具合がイレギュラーで市場の秩序が壊れたと判断される場合には、G20・G7の従来からの合意に沿って、円売りドル買いの協調介入が実施される可能性がある。これはパニック的な円高ドル安を止めて、円安ドル高方向にある程度押し戻す効果を発揮するだろう。

(4)【戦争が終結すれば、難民流出や財政負担などの問題も】
 第2次朝鮮戦争がそう長引かずに終結した後には、北朝鮮から韓国・中国・日本などへの難民流出の問題、南北のインフラ再建需要とその財政負担といったマターが、市場で随時材料になっていくと考えられる。

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