「話を聞くとわかったような気もするけれど、『マイナス金利』と聞いて不安になってしまったんだよね」

 「『マイナス』という言葉の響きも悪かったかもしれません。それと、今、世界中で金融市場が不安定になっていて、『ニューヨークで株価が下がった』とか『中国から資金が逃げてる』とか、心配なニュースが多い。このイメージと重なったのもあるでしょう」


(「5分で読めるマイナス金利」から引用)

「アベノミクスの逆回転」を止めるのは難しそうだ

 冒頭で引用したように、「マイナス金利」という言葉の持つネガティブなイメージが消費者の不安心理を高めたと考えられることに、安倍首相が言及した。日銀もそうした点を、もはや素直に認めざるを得なくなったのだろう。

 日銀はそのすぐ後で、米国株の下落と中国人民元からの資金逃避という、他の事象にも言及。マイナス金利という言葉のネガティブな響きを日銀自身が認めたことの印象を薄めようとしているように見える。だが、冷静に考えると、これは少しおかしい。米国株や人民元の下落によって不安心理が高まったことへの予防的な対応措置として日銀が導入したのが、マイナス金利だからである。そうした流れを説明していないのはフェアではないように思う。

 日銀は「5分で読めるマイナス金利」の最後で、次のように述べている。

 「でも、日本の会社は、全体でみると、史上最高の収益になっていて、経済は良い方向に向かっています。それに、この政策はとても強力です。いずれ『プラス』の効果がはっきり出てきて、明るくなってくると思います」


(「5分で読めるマイナス金利」から引用)

 この日銀の記述と、政府が3月23日に発表した月例経済報告とは、かみ合わない。月例経済報告では景気の基調判断が5か月ぶりに下方修正されたほか、企業収益の判断が1年7か月ぶりに下方修正され、「改善している」が「非製造業を中心に改善傾向にある」に書き換えられた。新興国の景気減速や為替の円高方向への反転を背景に、景気サイクルのリード役であることが多い製造業の収益状況は、政府としても公式に認めざるを得ないほど悪くなってきたということである。

 景気回復と物価上昇の「源泉」と言うことができる企業収益が増加しなくなってきたことは、「経済は良い方向に向かっています」という日銀の上記の主張とは、まさに正反対のことである。しかも、為替市場では円高ドル安が足元で110円を大きく割り込む水準まで進んでおり、輸出関連の製造業では業績見通しに強い下押し圧力が加わっている。

 マイナス金利を含む日銀の金融緩和によって「アベノミクスの逆回転」を止めるのは、どうやら難しそうである。

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