銀行が支払わなくて済むようになった預金金利はごくわずかだと説明しているが、「今はがまんして金利を低く」することがどうして景気好転や物価上昇に結び付くのか。一般の人々はおそらく、日銀の考え方をすぐには理解できないのではないか(住宅ローン金利の低下などについては後述)。

 さらに言えば、「金利さえ低くすれば日本経済はデフレから脱却し、預金金利が上昇するくらいまで景気は回復する」といった「金融政策万能論」的な見方は誤りだということに、1995年からずっと続いてきた超低金利状況の中で、多くの人々は薄々気付いていると考えられる。日銀は実質金利の低下を重視しているが、期待インフレ率の「操作」は困難である。

 いずれにせよ、金融緩和を一段と強化することによって「かならずデフレから抜け出せます」と日銀がいくら強調しても、それを額面通りに受け取る人は、最近の世論調査の結果から考えて、半数未満にとどまる可能性が高い(当コラム 3月22日配信「日銀は今こそ田中角栄を見習え」をご参照ください)。

「マイナス金利ってそんなに効果あるの?」

 「マイナス金利にしたあと、住宅ローンの金利は下がって、10年固定で借りても1%以下になっています。銀行のローンセンターは大忙しだそうです。会社が借りるときの金利も下がっています。みなさんが家を建てようとしたり、会社が工場やお店を建てたりするときは有利になります」


(「5分で読めるマイナス金利」から引用)

日銀にとって都合の悪い話は出てこない

 マイナス金利の効果によって住宅ローン金利や企業向け貸出金利が下がり、景気を刺激するはずだという、黒田総裁が国会などの場で繰り返し前面に出している説明である。

 だが、「住宅を買おうとする場合はローン金利の低下よりも物件価格の上昇の方がはるかに大きな問題」「キャッシュリッチで事実上無借金経営の上場企業も少なくない」というような、日銀にとって都合が悪い話は、ここには全く出てこない。

 また、「銀行のローンセンターは大忙しだそうです」とあるが、報道によると、多いのは既存ローンの借り換えの相談であって、住宅の新規購入に関する相談ではない。

「もう1%も物価が上がっているなら、十分でしょう。」

 「景気はいい時も悪い時もあるから、ある程度バッファーがないとすぐにデフレになってしまいます。飛行機だって地上ぎりぎりは飛べないでしょう。だから、日本銀行は2%の緩やかな物価上昇を目指しています。この2%というのは、アメリカもヨーロッパも同じで、世界共通です」


(「5分で読めるマイナス金利」から引用)

 0%ではなく1%の物価上昇が「地上ぎりぎり」という例えには、異論が出てきやすいだろう。先進国は構造的な低インフレ時代に入ったと考えることができ、日本の潜在成長率は欧米よりも低い。それでも欧米並みの「高度」を目指して、日本経済という飛行機が無理な政策によって上昇しようとすれば、エンジンが壊れるなど、機体が大きく損傷する危険がある。

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