
少し意外に思われるかもしれないが、主要国の中央銀行におけるトップ階層の女性の数は減少している。米国では、トランプ大統領が女性であるジャネット・イエレン氏の後任の米連邦準備理事会(FRB)議長に、男性であるジェローム・パウエル理事を指名。上院で承認されて今年2月に就任した。G20(20カ国・地域)で中央銀行トップの座にある女性は現在、ロシア連邦中央銀行のエルビラ・ナビウリナ総裁ただ1人である(なお、同行では上級副総裁4人のうち2人、副総裁4人のうち1人が女性になっている)。数年前には米国、ロシアのほかに南アフリカ共和国、アルゼンチンでも中央銀行のトップが女性だった。
先進国のみが含まれているG7(主要7カ国)について、中央銀行の金融政策を決定する組織やそれに関与する役職における女性比率を調べてみたところ、カナダ銀行が最も高い33.3%になった<図1>。
人数 | うち女性の数(具体的な名前・肩書き) | 女性比率(%) | |
---|---|---|---|
米国①(FRB) | 3 〔欠員4〕 | 1(ブレイナード理事) | 33.3 |
〃 ②(地区連邦準備銀行総裁) | 12 | 2(メスター・クリーブランド連銀総裁、ジョージ・カンザスシティー連銀総裁) | 16.7 |
ユーロ圏(ECB理事会) | 25 | 2(ラウテンシュレーガー専務理事、ゲオルガジ・キプロス中央銀行総裁) | 8.0 |
日本(日本銀行政策委員会) | 9 | 1(政井審議委員) | 11.1 |
英国 (イングランド銀行金融政策委員会〔MPC〕) | 9 | 1(テンレイロMPC委員) | 11.1 |
カナダ(カナダ銀行理事会) | 6 | 2(ウィルキンス上級副総裁、パターソン副総裁) | 33.3 |
理事会メンバー6人のうち、キャロライン・ウィルキンス上級副総裁とリン・パターソン副総裁の2人が女性である。
日本では、3月19日に日銀副総裁の任期が満了した岩田規久男氏・中曽宏氏の後任に、雨宮正佳氏・若田部昌澄氏が就任した。いずれも男性である。共同通信の報道によると、横浜市立大学の白石小百合教授を女性活躍の象徴として抜擢する案があったという。
だが、円高ドル安と株価下落が市場で急進行し、日銀の粘り強い金融緩和姿勢を市場にアピールして円高を少しでも止める必要が増す中で、4月8日に任期が満了する黒田総裁を再任して金融政策の継続性をアピールするとともにリフレ派の学者で追加緩和にも言及している若田部氏を起用する方が状況にマッチするという話になり、日銀初の女性副総裁誕生というアイデアは幻に終わったようである。
ECBでは女性活用の遅れが問題
金融政策の運営方針などを決める日銀の最高意思決定機関である政策委員会は、総裁・副総裁計3人のほか審議委員6人からなり、現在は政井貴子氏が唯一の女性である。したがって、日銀政策委員会の女性比率は11.1%に過ぎない。
もっとも、女性活用の遅れが最も問題視されているのは、欧州中央銀行(ECB)である。ユーロ圏各国の中央銀行総裁19名を含む理事会メンバー計25人のうち、女性は2人にとどまっており(ドイツ出身のザビーネ・ラウテンシュレーガー専務理事と、クリスタラ・ゲオルガジ・キプロス中央銀行総裁)、女性比率は8.0%である。女性の活用という面では後進国とされることが多い日本(日銀)の11.1%よりも比率が低い。
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