共和党員の「トランプ離れ」が加速しかねない情勢

 ここで興味深いのは、民主党議員45人に加えて共和党議員10人が偽証で、5人が司法妨害で、民主党の大統領であるクリントン氏の無罪に票を投じたことである。日本と違って米国の議会では党議拘束が基本的になく、議員個々人の見識・考え方に沿って投票するため、このような結果になった。

 すでに述べたように、トランプ政権内で国際協調派のシンボル的存在だったコーンNEC委員長の辞任により、共和党が伝統的に重視する自由貿易の理念が覆されたと感じた共和党員の「トランプ離れ」が加速しかねない情勢である。社会的ステータスや自尊心が強い共和党有力者の中には、同じ党でありながら「異端」とも言うべき存在であるトランプ大統領とあからさまに対立している人が何人もいる。

■図1:米「党派対立指数(Partisan Conflict Index)」(政治対立に関する主要紙記事数を指数化したもの)
■図1:米「党派対立指数(Partisan Conflict Index)」(政治対立に関する主要紙記事数を指数化したもの)
(出所)米フィラデルフィア連銀

「そうしたシナリオ」を描いておく必要性が高まる

 11月の中間選挙については、上院で民主党が過半数を奪回するという見方が現時点では多い。一方、全員改選の下院については、ゲリマンダー(党利党略に基づいた選挙区の恣意的な区割り)の影響もあって、共和党が過半数を維持するのではないかという見方がなお多い。だが、3月13日に行われたペンシルベニア州の下院補選では、「ラストベルト」に属する共和党の強固な地盤であるにもかかわらず、民主党候補が大接戦の末に勝利しており、世論の大きな流れは明らかに民主党に傾いている。

 モラー特別検察官の捜査報告書がトランプ大統領による司法妨害などを示すものになり、下院本会議で過半数の票が入って同大統領が訴追され、上院で弾劾裁判が行われる。そして、過半数を有する民主党議員に加えて「トランプ離れ」した共和党議員からも賛成票が入り、大統領の弾劾がギリギリの票数で成立する。あるいは、ニクソン大統領の例にならい、弾劾プロセスの途中段階で、国民の信を失ったことを悟ったトランプ大統領が自発的に辞任する。

 そうしたシナリオを描いておく必要性が徐々にではあるが着実に高まっているように、筆者には思える。

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