この発言、特に「日本の人口動態に全く懸念を持っていない」というくだりに、筆者はどうしても賛同できない。

 「人あっての経済」というのが、筆者の根本的な考えである。労働生産性さえ向上すれば生産年齢人口が減少しても乗り切れるはずだという主張もあるが、では、具体的にどういったタイムスパンで何をどうやれば生産性が上昇するのか。テクノロジー先進国の米国でさえ、労働生産性の伸びの停滞に頭を悩ませているのが現在の状況である。

 人口の高齢化が急速かつ着実に進んでいるため社会のムードが沈滞しがちであり、しかも「外」からサプライサイドに刺激を受けること(海外からの「よそ者」受け入れによる社会経済の活性化)には依然として消極的な日本という国が、目覚ましい生産性の伸びによって人口減・少子高齢化の重しをこの先完全に跳ね返していけるとは、筆者にはどうしても思えない。

成長力への期待はかなり薄らいでいる

 2012年12月に「アベノミクス」が開始されてから4年以上の月日が経過した。その間、日本経済全体の中長期的なビューはどう変わったか。

 家計の場合、2013年にかけて(マイナス圏の中ながら)いったん急上昇していた経済成長力DI(回答比率「より高い成長が見込める」-「より低い成長しか見込めない」)はその後、ジリ貧とでも言えそうな動きになっている<■図1>。

■図1:生活意識に関するアンケート調査 経済成長力D1
(出所)日銀

 企業の場合、実質成長率の今後5年間の見通しは2011年度の調査で+1.5%まで上昇したものの、直近の2016年度調査では+1.0%に下がり、2008年度の水準に逆戻りした<■図2>。

■図2:企業行動に関するアンケート調査 今後5年間の見通し 名目および実質成長率
(出所)内閣府

 有効求人倍率など雇用関連の数字はきわめて良好だが、これは若年人口減少と過剰供給構造温存の組み合わせの中で起きている現象であり、経済の実力が上向いた兆候だとは、家計や企業は認識していない。人口対策の本格展開が引き続き待たれる。