「残業代ゼロ」横行の懸念から、今も導入に至らず

 ただ、上記の方針を貫徹しようとする場合、現実には問題点がいくつもある。たとえば、①「成果」を公平かつ客観的に評価して給与の大小に結びつける仕組みを作ることはどこまで可能か、②制度が悪用されて「残業代ゼロ」が横行してしまう労働者が不利益を被ることにならないか、といった点である。この②のリスクをもっぱら前面に出して、労働組合の側は「ホワイトカラー・エグゼンプション」に強く反対している。

 2014年6月の成長戦略に「成果で評価される働き方改革」が盛り込まれるなど、時間ではなく成果により評価する「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を目指す政府の取り組みは、現在に至るまで続いている。

 この間、2013年には、少子化対策の一環で「働き方改革」が注目された。政府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」は同年5月の提言で、出生率回復に向けた「3本の矢」として、子育て支援、結婚・妊娠・出産支援に加え、働き方改革を挙げた。これをうけて、政府は6月に「少子化危機突破のための緊急対策」を決定。具体的には、子どもが3歳になるまで育児休暇取得や短時間勤務をしやすくするよう企業に働きかけることなどがうたわれた。

そして現在の最大のテーマは、残業時間の法定上限見直し

 そして現在、「働き方改革」の最大のテーマになっているのは、周知の通り、残業時間の法定上限見直しである。政府は年720時間(月平均60時間)を基本的な上限とし、繁忙期は例外として「月100時間未満」まで認める労働基準法改正案を年内に国会に提出して、2019年度にも残業の上限規制を導入する構えである。

 安倍首相は2016年3月25日、第6回一億総活躍国民会議で、「働き方改革」について、次のように発言した。

 第一に、長時間労働の是正であります。長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や女性の活躍を阻む原因となっています。戦後の高度経済成長期以来浸透してきた『睡眠時間が少ないことを自慢し、超多忙なことが生産的だ』といった価値観でありますが、これは段々ですが、そうでもない、生産性もないという雰囲気が、この3年間で大分変わり始めているのではないかと思います。私はまだ若いサラリーマンの頃、こういう価値観があって、8時くらいに帰ろうとするともう帰るの、という雰囲気があったわけですが、企業側に聞いたところ、政府が全体の労働時間の抑制や働き方を変えていくことについて、旗振り役を期待しているかということについて期待している人が90%ということは、皆帰るのだったら帰りたいということに変わり始めている。やっとそういう雰囲気に変わり始めたので、ここは、正に我々が更に背中を押していくことが大切であろうと思います。

官邸のウェブサイト 2016年3月25日「一億総活躍国民会議」

 そして、同年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」には、次のくだりがある。

(長時間労働の是正)

 長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっている。戦後の高度経済成長期以来浸透してきた「睡眠時間が少ないことを自慢し、超多忙なことが生産的だ」といった価値観が、この3年間で変わり始めている。長時間労働の是正は、労働の質を高めることにより、多様なライフスタイルを可能にし、ひいては生産性の向上につながる。今こそ、長時間労働の是正に向けて背中を押していくことが重要である。

官邸のウェブサイト内PDF資料「働き方改革に関する総理発言・閣議決定」