②実務能力が十分伴わない中での政権運営の危うさ

■「(トランプの時代)混乱と熱狂、政権1カ月 閣僚未承認・補佐官辞任、『現場に不安』

(2月20日 朝日新聞)

(前略)

 ホワイトハウス近くにある米通商代表部(USTR)。トランプ氏が最重要視する貿易政策を担うはずの役所だ。政権発足後まもなく、広めの会議室に十数人の職員が集まった。テーブルには、ホワイトハウスに新設した国家通商会議(NTC)が作った貿易政策の方針に関する文書が置かれていた。

 職員らは首をひねった。「ホワイトハウスは議会との協議や通告などの手続きを理解していなかった」と関係者は打ち明ける。

 貿易促進権限(TPA)法では、大統領が新たな貿易交渉に入る90日前に議会に通告するなどの規定がある。NTCの文書は、こうした手続きにそぐわない内容だった。

 「TPAによると、このような手続きが必要です」。職員らは2時間近くかけ、法律上必要な手続きを20項目ほど箇条書きにする作業に追われたという。

(後略)

高い期待感を保つ「株式市場」、懐疑的な「債券・為替市場」

 米国の市場では、トランプ大統領が公約する減税や金融規制緩和といった経済政策への期待感をそのままハイレベルで保ち続けるのか、それとも、膨らみすぎた期待や公約の実現可能性への疑念が大きな失望にいずれ転化するだろうと見切った上で、「トランプラリー」とは反対方向に動く余地を模索するのかで、市場ごとにスタンスが異なっている。

 トランプ政権への高い期待感を保っているのが、株式市場である。2月27日の取引で、ニューヨークダウ工業株30種平均は12営業日連続の史上最高値更新。S&P500種も最高値を更新した。

 一方、昨年12月後半からトランプ政権の政策運営に懐疑的なスタンスをとっているのが、債券・為替市場である。米10年債利回りは12月15日に2.64%をつけた後は、これよりも低い水準で上下動している。1月12日と17日に2.30%まで買われた後、2月24日にも低下余地を模索し、2.31%まで一時低下した。

 為替市場では、「トランプラリー」の下でつけたドル/円相場のピークが、12月15日の118.66円。その後は、米長期金利低下や、仏大統領選挙を軸とする欧州政治リスクにらみの円買いから、徐々にドル安円高方向にシフト。2月7日には111.59円をつけた。FRBによる年内利上げ3回以上の織り込みによってドルは今のところ下支えされているものの、欧州の政治リスクやトランプ政権の迷走ゆえに利上げの回数はもっと少ないという見方が強まると、110円割れの可能性が増す。また、ユーロ/円相場は2月24日に118.25円までユーロ安円高に動いた。仏大統領選にらみの「リスクオフ」が折に触れて進むだろう。

トランプ演説を経ても「温度差」は解消されていない

 そうした中で市場で注目されたのが、2月28日のトランプ大統領による施政方針演説だった。米株式市場においても期待が失望へとついに変わる転機になり得る重要なイベントだと筆者は考えたのだが、「綱引き」の決着は今回もつかなかった。

 演説は減税の具体的な内容などへの言及はなく、新味に乏しかった。しかし、米国株は大幅高。ニューヨークダウ工業株30種平均は高値を更新した。演説が「大統領らしく穏当な内容だった」「ケンカ腰ではなく妥協する姿勢を見せた」点が評価されたのだと解説されている。

 しかし、株価の大幅高に加えて、3月中旬の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測急浮上という新たな動きがあったにもかかわらず、米10年債利回りなど長期金利の上昇と円安ドル高進行は、直近レンジ内での限定的なものだった。トランプ演説を経ても、株式市場と債券・為替市場の「温度差」は解消されていない。

 今後を大きく左右するポイントになり得るのが、「トランプ減税」が早期に実現するかどうかである。ほぼ不可能だと筆者はみている。