1964年ごろ、欲しい子供の数は「3人」が最多だった

 1964年の国民生活に関する世論調査にはほかにも、興味深い特徴がいくつかある。ここでは、あと2つだけ取り上げたい。

 まず、欲しい子供の数。

 「あなたは、子供は何人くらいがよいと思いますか」という質問に対する回答分布は、「1人」(1.5%)、「2人」(24.9%)、「3人」(53.5%)、「4人」(11.1%)、「5人」(3.1%)、「6人以上」(0.8%)、「子供はいらない」(1.0%)、不明(4.2%)である<■図1>。

■図1:「国民生活に関する世論調査」(1964年) 希望する子供の数
(出所)内閣府

 今の日本の若い世代が見たらおそらく「どこの国の調査結果なのか」と思ってしまうような数字の並びだろう。最多の回答は「3人」であり、「子供はいらない」は1.0%しかいない。ちなみに、筆者はこの調査が行われた前年の1963年生まれで、3人きょうだいである。

 少子化対策は金銭支援(税制上の優遇など)とインフラ整備(託児施設などの大幅増設)が車の両輪になると、筆者は長く主張している。だが、それら以外に、人々の意識やライフスタイルの大きな変化をどう乗り越えていくかという、非常に高いハードルがある。

泥道に難渋したり、大雨が降ってドブがあふれたりしていた

 もう1つの特徴は、社会インフラが当時はまだ十分に整備されていなかったことである。

 生活環境についての不満をたずねたところ(複数回答)、最も多かったのは、「家のまわりの道がぬかるんで困るとか、道路について困っている」(22.9%)、次が「下水や水はけのことで困っている」(16.5%)だった。泥道に難渋したり、大雨が降ると水がドブからあふれ出たりしていた筆者の子供のころの実体験からも、納得できる話である。当時は国・地方公共団体が予算で公共事業費を毎年積み増していくことが十分すぎるほど正当化される時代だったと言えるだろう。

 だが、今はそうではない。すでに社会資本の整備がかなり進んでおり、次のステージとして、それらの維持更新に莫大なコストがかかることが大きな問題になりつつある。維持していくべきインフラの取捨選択は避けられまい。東京五輪前後の景気の落ち込みを回避するという短期的な視点から無駄な公共事業を積み増すようなことは、厳に慎むべきだろう。

 このように、古い世論調査の結果から現在と比べた場合の人々の意識の変化をあぶり出して、現在および将来の政策運営を考えてみることには、十分意義がある。