1964年の東京五輪の頃の国民生活は、今とは全然違う
一部には、2020年の東京五輪は1964年のケースのように日本経済の成長加速に向けた「起爆剤」になるのではないかといった強気の見方をする向きもある。だが、当時との人口動態の大きな違いから考えて、まずそうはなるまい。また、国民世論の様子も1964年当時と足元では大きく異なっている。ここでは1964年実施の「国民生活に関する世論調査」の結果から、そうした雰囲気の違いを確認しておきたい。

内閣府のホームページには、以前に総理府として実施していたものを含め、国民生活に関する世論調査のこれまでの結果が掲載されている。1964年1~2月に実施された第7回調査は、暮らし向きについての以下の質問から始まっていた。
「お宅の暮らし向きは去年の今頃とくらべて楽になっていますか、苦しくなっていますか、同じようなものですか」という問いに対する回答分布は、「楽になった」(9.6%)、「同じようなもの」(55.9%)、「苦しくなった」(31.0%)、不明(3.4%)。高度成長期にしては「楽になった」が少なく、「苦しくなった」が多い印象を受けるだろう。その主因は明らかに、インフレ率の高さにあった。
暮らし向きが「苦しくなった」理由(複数回答)で最も多かったのは、「物価の上昇により支出が増えた」である。そして、「去年の今頃とくらべて物価は上がったと思いますか、下がったと思いますか、それとも変わりないと思いますか」という問いへの回答分布は、「上がった」(93%)、「変わりない」(4%)、「下がった」(0%)、不明(3%)である。
さらに、物価の見通しをたずねた「これから先はどうでしょうか。物価は上がると思いますか、下がると思いますか、ほとんど変わらないと思いますか」という問いへの回答分布は、「上がる」(71.8%)、「変わらない」(12.6%)、「下がる」(1.3%)、不明(14.3%)。7割以上が物価上昇を予想しており、インフレ期待(懸念)が非常に強い状態だった。

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