事業法人による債券運用が減少した理由としては、マイナス金利導入とそれによる長短金利低下の影響が大きい。特に、短中期ゾーンの金利がマイナス化したことで、短い期間の余資運用において主力だったCD・CP(コマーシャルペーパー)などでの現先運用や、1~2年程度の債券購入を、事実上行えなくなったことが痛い。これらより運用期間が長い長期ゾーンでは、日銀により「ゼロ%程度」に金利ターゲットが設定されているが、10年程度も資金を固定化することになる割には金利水準がかなり低いと言わざるを得ない。また、超長期ゾーンには現在の目線ではそれなりにまとまった金利が付いているものの、後述するように日銀によるグリップが相当弱く、値動きが不安定である上に、償還までの期間があまりにも長すぎることから、一般企業の余資運用には通常適さない。

 日経平均リンク債などのオプション取引を絡めた金融商品で、より大きなリスクをとりながら金利収入をできるだけ確保しようとする動きも出ているが、法人が預金通貨に滞留させている金額と比べれば、金額の規模はかなり小さい。

「長生きリスク」に備えた個人の預金も積み上がる

 法人に加えて、「長生きリスク」を拭い去れない個人の預金も積み上がっている。前年と比べた伸び率が貸し出しのそれを常に上回る中で、日銀が発表した1月の預金・貸出動向速報から試算される銀行の「預貸ギャップ」(預金と貸出金の差)は223兆9185億円になり、過去最大をまた更新した。

 このように「未曾有のカネ余り」が続いていることから、銀行経由にせよ事業法人による直接の動きにせよ、潜在的には債券での資金運用のニーズは非常に大きいと考えられる。したがって、そうした観点からは、長期金利の上昇・国債イールドカーブの金利上昇方向での急傾斜化(ベアスティープ化)には自ずと限度がある、という話になる。

超長期ゾーンの金利はこのところ不安定な動き

 ただし、すでに述べた中にもあるように20年・30年・40年の国債利回りに代表される超長期ゾーンの金利はこのところ不安定な動きとなっており、金利低下の阻害要因である。

 そう書くと、日銀は「イールドカーブ・コントロール」を行っているのだから超長期ゾーンでも金利上昇は押さえ込まれているのではないかと、不思議に思う人もいるだろう。

 だが、日銀が長期金利の操作に乗り出した昨年9月から今年2月までの間、このゾーンの金利は大幅に上昇しており、日銀はそれを事実上追認してきた。

 金融緩和の枠組みを修正するに際して日銀が導入した「イールドカーブ・コントロール」。その運営(長期国債買い入れの入り方)が不安定化した原因として、筆者を含む市場の側は、①調節パターンの固定化をできるだけ回避して柔軟性を確保しておきたい現場(日銀金融市場局)の意向、②市場に対する日銀のミスコミュニケーション(対話の失敗)に加え、③トランプ米大統領から日本の円安誘導をけん制する発言が出てきたことによる調節スタンスの萎縮(金利低下を促すような目立った行動をとりにくくなったこと)もあると推測している。

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