賃金や物価の動向は、政府や日銀の思い通りにならず

 だが、実質賃金の季節調整済指数の水準は、2010年の水準から5%ほど切り下がったままである。物価調整前の名目賃金(現金給与総額)を見ても、ボックス圏を脱して大きく上向いていく兆しはない。むしろ、働き方改革の中で法律により残業規制が強化されることが、所定内給与の減少を通じて個人消費の押し下げ要因になることが警戒されている。

 日銀は物価安定の目標2%の実現を目指しており、政府とともに春闘での積極的な賃金引き上げを企業に促している。だが、賃金や物価の動向は、彼らの思い通りになっていない。したがって、長期金利ターゲット(ゼロ%程度)の引き上げやマイナス金利解除などの金融引き締め措置が近い将来に行われる可能性はほとんどないと、筆者はみている。

米国のサービス、+2%ラインから緩やかに上方へ

②米国<■図2>

■図2:米国 CPI(総合) 財、サービス別
■図2:米国 CPI(総合) 財、サービス別
(出所)米労働省
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 ドル高による物価下落圧力を反映して、財の前年同月比は水面下に沈んでいた。だが、原油価格が反発したことをうけて、直近では持ち上がってきている。

 一方、サービスの前年同月比は、+2%ラインから緩やかに上方に動いてきている。FRB(連邦準備理事会)が利上げをこれまでに2回行ったことと整合的な物価動向ではある。

「人口増加社会」という米国経済の強みが反映

 サービス価格の上昇には、雇用情勢が緩やかに改善して賃金が増加していることのほか、賃貸住宅の需給がひっ迫して家賃が上昇を続けていることが寄与しており、「人口増加社会」という米国経済の強みが反映されていると言うこともできるだろう。もっとも、家賃の上昇には中古・新築の住宅販売価格が上昇しすぎたことから賃貸へのシフトが起こっているという、米国の住宅市場の歪みも反映されている。

 また、サービスの前年同月比が「リーマンショック」前には恒常的に+3~4%台であったことと比べると、ようやく+3%台に乗せてきた足元の数字は色あせる(雇用統計に含まれている時間当たり賃金の増加率の状況とパラレルである)。

 さらに、米国の2%というインフレ目標の対象となっている物価指標は、CPIよりも上昇率が低いPCE(個人消費支出)デフレーターという別の物価指標であることにも、十分留意する必要がある。

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