このため、民主党内で支持基盤が大きいヒラリー・クリントン候補が、健闘するサンダース候補を振り切って同党の大統領候補指名争いに勝利した上で、大統領選でも勝利して米国史上初の女性大統領になるだろうと、筆者は予想している。

 その場合、「クリントン人脈」の一員であるサマーズ氏が経済政策の関連で、2017年1月に発足する次期政権において枢要な地位を占める見通しが開けてくる。

 イエレンFRB議長の議長任期(4年)が切れるのは2018年2月3日である。次の大統領が後任を、おそらく2017年中に指名することになる。「議長の1期(4年)限りでの退任は最近、例がない」「党派を超えた議長再任は定着していた」わけだが(2016年1月10日 日経新聞)、イエレン議長の場合は、果たしてどうなるだろうか。

 強引な利上げによる米景気の腰折れやグローバル経済・金融市場の大きな混乱といった明らかな政策ミスを主導してしまうようだと、議長に再任される芽はなくなるだろう。

 その場合、バーナンキ前議長の後任の有力候補として取り沙汰されたこともあるサマーズ氏の名前が次のFRB議長の最有力候補として浮上してくることが、十分あり得る。

米利上げ回避は明るいニュースに

 2000年8月のゼロ金利政策解除など日銀の過去の政策ミスをイエレン議長が十分知っていることに加え、議長再任の可否が左右されるという上記の視点から考えても、イエレン議長による金融政策の今後の舵取りは「安全運転」が基本になる可能性が高い。

 また、イエレン議長を支えるダドリー・ニューヨーク連銀総裁が金融市場の実際の状況を冷静かつ的確に把握していることも意味合いが大きい。同総裁は2月3日、昨年12月の利上げ決定以降の金融市場の状況は「著しくひっ迫している」とした上で、そうした環境が3月の次回FOMCまで続けば「金融政策の決定において十分に考慮する必要がある」と明言し、追加利上げの先送りをにおわせた。

 無謀な追加利上げの積み重ねがないのならば、米国経済で不均衡の蓄積がまださほど進んでいないこともあり、早期のリセッション入りはおそらく回避されるだろう。実際にそうなれば、世界経済全体に暗雲がたれこめている中だけに、数少ない明るいニュースになる。

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