北朝鮮の「様子見期間」は終わったようだ

 中国は、張成沢氏と緊密な関係を作った上で、国際社会に対してより融和的な方向での、北朝鮮の体制変革を画策していたようである。仮にそれが実行された場合に後継首班となる可能性があったのが、金正男氏だった。潜在的に脅威となり得る異母兄の抹殺を金正恩委員長が指示したのではないかという見方が、韓国の専門家などから出ている。

 安倍首相が訪米しているタイミングに合わせる形で、北朝鮮は新型中距離弾道ミサイルの発射実験を行った。発射の兆候を察知するのが難しい固体燃料が使用されたこと、圧縮ガスによるミサイル射出の後でロケットエンジンに点火するコールドローンチ方式が採用されたことの2点が今回の発射の特徴であり、北朝鮮のミサイル技術高度化が誇示された。それに加えて、今回の殺害事件である。

 おそらくトランプ米新大統領の出方待ちで、国際社会で北朝鮮が波風をあえて立てようとしない時間帯が続いていたのだが、どうやらそうした様子見期間は終わったようである。

米中トップの電話会談が、金正恩氏の判断に影響した?

 米国と中国の関係が悪化すれば、中国がこれまでよりも北朝鮮寄りの姿勢になる可能性があった。だが、すでに述べたように、トランプ大統領は習近平国家主席との電話会談で「一つの中国」原則を突然あっさり認めた。米国と中国の間で何らかの「ディール」が成り立つ方向のように見え、これが金正恩委員長の情勢判断に大きく影響したのではないかと、筆者はみている。

 また、北朝鮮の金正恩委員長には、米国や韓国の政治が不安定化していることが、自国の軍事パワーを誇示するチャンスのように見えていることだろう。

「(トランプ政権は)1年ももたないだろう」

 米国では、トランプ政権でキーパーソンの1人とみられていたフリン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が2月13日、就任からわずか3週間で辞任に追い込まれた。フリン氏と今年会談した自民党議員によると、フリン氏が「(政権は)1年ももたないだろう」と語っていたという、驚くべき報道も出ている(2月15日 東京新聞朝刊)。

 韓国では、朴槿恵(パククネ)大統領の弾劾訴追案が昨年12月9日に国会で可決され、同大統領は職務停止となった。現在は、憲法裁判所の判断待ちの時間帯。弾劾が認められれば大統領選挙が行われる。

金正恩体制の「保証」取り付けを目指す北朝鮮

 北朝鮮は今後も、核兵器・弾道ミサイルの開発・高度化・実戦配備を着実に進めながら、米国との直接対話を通じての現在の政治体制保証の取り付けを目指すだろう。

 もっとも、市場の側は、そうした北朝鮮の意図・最終的な目的を十分認識するようになっている。このため、ミサイル発射など北朝鮮マターを材料にして市場が「リスクオフ」に傾く場面は、近年きわめて少なくなっているのが実情ではある。

この記事はシリーズ「上野泰也のエコノミック・ソナー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。