米中関係の行方からこれからも目が離せない

 トランプ大統領は日米首脳会談直前の9日に突然、中国の習近平国家主席と電話会談を行い、米国の方針変更の可能性で中国が非常にナーバスになっていた「一つの中国」原則を自らの政権でも維持する考えをじかに伝えた。これは中国に対する「軟」の姿勢である。

 一方、日米首脳会談では尖閣諸島への日米安保条約第5条適用を明言しつつ、日米同盟の重要性を確認した。これは中国に対する「硬」の姿勢である。

 日米首脳会談終了後の共同記者会見でトランプ大統領は、「(中国と)良好に付き合える過程に入っていると思う。日本にとっても大変な恩恵がある」という、意味深長な発言を行った。時事通信によると、米国と中国の間で「経済面で何らかのディール(取引)が進んでいる可能性がある」と、日本の外務省幹部が記者会見の後で警戒感をあらわにしたという。米中の関係が今後どのように展開していくか、十分注意する必要がある。

そんな折に起こった金正男氏暗殺事件

 そうしたことを考えているうちに、北朝鮮ウォッチを長く行ってきた筆者にとって非常にショッキングな事件が起こった。

 韓国メディアは2月14日、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄にあたる金正男(キムジョンナム)氏が13日午前、マレーシア・クアラルンプールの空港からマカオに向かおうとしていたところ、毒物により殺害されたと報じた。ロイターによると、北朝鮮の工作員によって殺害されたとの見方を米政府は強めている。また、韓国に亡命した元北朝鮮高官は、「金正恩は金正男に北に帰国するよう指示したが、金正男がこれに応じなかったため、処断された」と述べた(韓国・聯合ニュース)。

 金正男氏は2011年12月に死去した金正日(キムジョンイル)朝鮮労働党総書記の息子の1人で、後継者候補ではないかとされた時期もあった。だが、2001年にドミニカ共和国の偽造パスポートで日本に入国しようとして空港で拘束され(東京ディズニーランド見物が入国の目的だったとされている)、後継レースから脱落したようである。2010年にはテレビ朝日の取材に対し、北朝鮮の指導者が3代にわたり世襲となることに、個人的には反対だと述べた。

 2013年12月には後見人だった張成沢(チャンソンテク)元国防副委員長が処刑され、張氏の妻で正男氏の叔母である金慶喜(キムギョンヒ)氏も病床に伏すなど、金正男氏は後ろ盾を失ったという評価が出ていた(聯合ニュース)。そうした中での殺害事件だった。

金正男(キム・ジョンナム)氏とみられる男性(2001年5月、成田空港)(写真:AP/アフロ)
金正男(キム・ジョンナム)氏とみられる男性(2001年5月、成田空港)(写真:AP/アフロ)

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