
賃上げ強化論者の関心は、企業保有の多額の現預金
「企業はため込んだ内部留保(あるいは利益剰余金)を手元で遊ばせず、賃金として従業員に支払うべきではないか」といった主張があり、先の衆院選では野党の一部から「内部留保課税」という選択肢が浮上した。これは二重課税であるとして財界は強く反発し、麻生財務相も反対の意向を表明した。
利益剰余金というのは、税引き前利益から法人税などの納税額を差し引いた残りの金額である当期純利益から、配当金を支払った後の金額である(利益準備金を含む)。バランスシート上では資本金・資本準備金とともに純資産(=自己資本)の部に計上される。ただしそれは企業が保有する現預金とイコールではなく、少なからぬ部分が設備投資や海外M&Aを含むさまざまな企業活動に充てられているとみられる。そうした理解が徐々に広がるに連れ、賃上げ強化論者の関心は、企業が保有する多額の現預金(とりわけ預金)に移行してきた。
どの程度が「上振れ部分」か、2つの考え方
では、企業が積み上げた現預金(あるいは預金)の残高のうち、考え方としてどの程度が「上振れ部分」と考えられるのだろうか。2つの考え方に基づいて試算してみた。
① 法人企業統計調査 「現金・預金」を「売上高」で割った比率 → 約30.2兆円上振れ
企業が保有している現預金の残高は確かに膨らんでいる。財務省が発表した2017年7-9月期の法人企業統計調査で、「現金・預金」(当期末流動資産)は、全産業(金融業・保険業を除く)ベースで約200兆円(199兆5931億円)である。
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