そのことは、マイナス金利導入直後のドル/円相場の上昇が1月29日の121.70円で頭打ちになり、その後120円割れ、115円割れ、さらに2月11日には一時110円台まで円高ドル安が急速に進んで、マイナス金利導入の効果があっさり打ち消されたことから確認されたと言えるだろう。

 日銀が今回導入したマイナス金利のスキームは、当座預金残高のうちごく一部にのみ0.1%をチャージするものであり、金融機関の収益に一定の配慮をする代わりに、為替相場に及ぶ効果は限定的なものになった。

 また、ドル/円相場は、日本側の材料だけで動くわけではなく、米国側の材料、中でもFRB(連邦準備制度理事会)による今後の金融政策運営(利上げ回数や利下げ転換の有無)によって、大きく左右される。米国の利上げが当面困難であることがイエレン米FRB議長の議会証言で確認されると(当コラム1月26日配信「昨年末の米利上げは2000年の日本そっくり 」参照)、円買いドル売りが加速した。

 さらに、「原油価格下落」と「中国経済不安(さらには不信)」という、「リスクオフ」の円高に市場が傾斜する原因となる2つの大きな材料が厳然と存在し続けていることも、非常に重要である(当コラム 2月9日配信「『リーマンショック2』は来るのか 中国『不信』・原油『底なし』、2つのビッグリスク」参照)。その上、仮に日銀が今後マイナス金利幅を拡大する場合でも、市場に対するサプライズ効果はもはや期待しにくいという事情もある。

 さて、今回のマイナス金利導入に対する一般の預金者の反応はどうなのか。

 新しい準備預金の積み期間が始まり、日銀当座預金残高のうち「政策金利残高」に対して0.1%のマイナス金利が適用され始める2月16日を待たずに、多くの銀行で定期預金の金利が引き下げられたり、MMFなど短期の公社債で運用する投資信託の購入受付が停止されたりするなどしており、新聞各紙はそうした動きを大きく取り上げている。

預金者にとっては大差なし

 だが、預貯金の金利がきわめてゼロに近いことが長期化・常態化しているため、金利のさらなる微細な低下に対して、預金者が目立った動きに出るようなことはないだろう。

 ただし、多くの預金者にとって、「増えない」ことと「減る」こととは、意識の面でまったく違う。したがって、既に述べた通り、一般の(小口の)預金者から口座管理手数料を徴収するのは、現実問題として非常に困難である。

 なお、マイナス金利の導入を有権者がどのように受け止めているかについては、1月30~31日(決定の直後)に実施された読売新聞の世論調査が参考になる。

 質問「日本銀行は、初めて『マイナス金利』を導入する追加の金融緩和策を決めました。あなたは、この緩和策が景気の回復につながると思いますか、思いませんか」に対する回答は、「思う」(24%)、「思わない」(47%)、答えない(28%)になった。

 金利をマイナスの領域まで無理に引き下げても景気回復につながるとは思わないという、筆者の意見ではきわめて妥当な見方をとった回答が、半分近くになった。